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11.2 カットオフ法の検証(The cut-off method)―渦線の動力学

 薄いコアをもつ渦輪に対して、その内部構造が任意である場合を、§10.3 の Lamb 変換によって速度が計算されている例として調べることで、カットオフ法を検証し、パラメータ $\delta$ の推定を得ることができる。今、半径 $R$ の渦輪の速度は、カットオフ公式により次のように与えられる。

$$
\begin{split}
U = \ff{\G}{4\pi}\int_{\ff{\delta a}{R}}^{2\pi-\ff{\delta a}{R}} \ff{R\sin \ff{\q}{2}}{4R^2\sin^2 \ff{\q}{2}}\diff \q = \ff{\G}{4\pi R} \log \ff{4R}{\delta a}
\end{split} \qquad(1)
$$

  (10.3.20) に示した解析結果と比較すると、カットオフパラメータが次式で与えられるとき一致が得られる。

$$
\begin{split}
\log 2\delta = \ff{1}{2}-\ff{2\pi^2 a^2 \ol{v_{\q}^2}}{\G^2}+\ff{4\pi^2 a^2 \ol{w_{0}^2}}{\G^2}
\end{split} \qquad(2)
$$

 カットオフ法の仮定は、この形が少なくとも主要項の次数では、すべての渦糸に対して妥当である、というものである。ただし $\delta=\delta(a, v_\theta, w)$ であることに注意せよ。したがってカットオフは局所構造に依存し、局所構造が求まるまでは解析は不完全である。 軸方向流をもたない一様コア、あるいは中空渦(hollow vortex)に対しては、それぞれ

$$
\begin{split}
\delta = \ff{1}{2}e^{1/4}, \quad\RM{or}\quad \delta = \ff{1}{2}e^{1/2}
\end{split} \qquad(3)
$$

である。

 Rosenhead [1930] は、カットオフ公式を次で置き換えることを提案している。

$$
\begin{split}
\B{u}(\B{R}) = \ff{\G}{4\pi} \oint \ff{\B{s}’\times(\B{R}-\B{R’})}{ \Big\{ (\B{R}-\B{R’})^2+\mu^2a^2 \Big\}^{3/2} }\, \diff s’
\end{split} \qquad(4)
$$

 この形は数値積分にも利点がある(Moore [1972])。もし、

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \mu = \ff{2\delta}{e} \EE
&\, \log \mu = \log 2\delta-1
\end{split} \qquad(5)
\right.
$$

ならば、2つの形は等価である。Thomson [1883] は $\mu=1$ でこの形を用いたが、これは渦輪の速度を誤って与えたものである。すなわち、一様渦輪については、Kelvin の公式における $1/4$ を $1$ に置き換える必要がある。

 カットオフ法の利用例として、プロペラ後流や回転物体の後流のモデルとして用いられ、らせん渦(helical vortex)への適用がある。例えば $z$ 方向を軸にもつ、運動する左巻きらせんの媒介方程式は次で与えられる

$$
\begin{split}
\B{R} = D\left( \B{i}\cos\q+\B{j}\sin\q-\B{k}\ff{\q+\sigma t}{\gamma} \right)
\end{split} \qquad(6)
$$

 これは半径 $D$、軸 $\B{k}$、ピッチ $\DL{\ff{1}{\gamma}}$ をもち、周期 $\DL{\ff{2\pi}{\sigma}}$ で回転するらせんである(ピッチ $0$、すなわち $\gamma=\infty$ は円であり、無限ピッチ、すなわち $\gamma=0$ は直線である)。曲率半径は $\DL{\rho=\ff{D(1+\gamma^2)}{\gamma^2} }$ である。半径 $a$ の渦糸がこのようならせんに巻き付けられているとき、カットオフ理論は、

$$
\begin{split}
a \ll \ff{D}{\gamma^2}
\end{split} \qquad(7)
$$

であれば適用できる。

 $\diff s$ と $\B{k}$ を同じ方向に取ると、$\diff \q$ が減少すると $\diff s$ が増加するようになる。速度を計算するため、カットオフ公式に適用すると以下が得られる。

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \B{s} = \ff{\gamma}{\sqrt{1+\gamma^2}}\Big( \sin\q, -\cos\q, 1/\gamma \Big) \EE
&\, \diff s = -D\ff{\sqrt{1+\gamma^2}}{\gamma}\diff \q \EE
&\, \ff{\B{n}}{\rho} = -\ff{\gamma^2}{D(1+\gamma^2)}\Big( \cos\q, \sin\q, 0 \Big)
\end{split}
\right.
$$

 一般性を失うことなく $t=0$ として $\theta=0$ で速度を評価できる。対称性から $\B{u}\cdot \B{i} =0$ と言えて、$y$ および $z$ 成分を含む速度はこのように与えれれる。

$$
\begin{split}
\B{u} &= -\ff{\G \gamma^2}{4\pi D}\left\{ \B{j}\int_{[]} \ff{\q\sin\q-1+\cos\q}{ \big(\q^2+2\gamma^2(1-\cos\q) \big)^{3/2} } \diff \q \right. \EE
&\qquad\quad \left. +\B{k}\gamma \int_{[]} \ff{1-\cos\q}{ \big(\q^2+2\gamma^2(1-\cos\q) \big)^{3/2} } \diff \q \right\}
\end{split} \qquad(8)
$$

 ここで積分は $-\infty$ から $\infty$ までの範囲であり、$[]$ は $|\theta|<\DL{ \ff{a\delta}{D}\ff{\gamma}{\sqrt{1+\gamma^2}} }$ に対する寄与を除外することを意味する。次に大きいピッチ、すなわち $\gamma\ll 1$ の場合に特化することにしよう。$O(\gamma^2)$ の項を無視すると以下を得る。

$$
\begin{split}
\B{u} &= -\ff{\G \gamma^2}{2\pi D} \left\{ \B{j}\int_{\ff{a\gamma \delta}{D}}^{\infty} \ff{\q\sin\q-1+\cos\q}{\q^3}\diff \q+\B{k}\,\gamma \int_{\ff{a\gamma \delta}{D}}^{\infty} \ff{1-\cos\q}{\q^3}\diff \q \right\}
\end{split} \qquad(9)
$$

これらの積分は、次の余弦積分関数 $Ci$ を用いることで( $C$ は $\q\to 0$ の極限でのオイラー定数 $0.5772\cdots$ である)、

$$
\begin{split}
Ci(\q) = -\int_{\q}^{\infty} \ff{\cos\q}{\q}\diff \q \sim C+\log \q+O(\q^2)
\end{split}
$$

そして、

$$
\begin{split}
\ff{a \gamma \delta}{D} \ll 1
\end{split} \qquad(10)
$$

のとき、

$$
\begin{split}
\B{u} = -\ff{\G \gamma^2}{4\pi D} \left\{ \B{j}\left( \ff{1}{2}-C-\log \ff{a\gamma \delta}{D} \right)+\B{k}\gamma \left( \ff{3}{2}-C-\log \ff{a\gamma \delta}{D} \right) \right\}
\end{split} \qquad(11)
$$

を得る。

 これにて念願の $\sigma$ が求められる。曲線上の任意の点は、$\B{u}$ の法線成分によって曲線の法線方向に動く。すなわち $\DL{ \left(\ff{\del \B{R}}{\del t}-\B{u}\right)\times \B{s} = \B{0} }$ である。式 (6) より $\DL{ \ff{\B{R}}{\del t} = -\ff{D \sigma}{\gamma} \B{k} }$ であり、$\theta=0$ では $\B{s}$ は $\DL{-\B{j}+\ff{\B{k}}{\gamma} }$ に平行である。従って、

$$
\begin{split}
-\ff{D \sigma}{\gamma}\B{k}-\B{u} = \lambda \left( -\B{j}+\ff{\B{k}}{\gamma} \right)
\end{split} \qquad(12)
$$

となるような $\lambda$ が存在すると言える。両辺の $\B{k}$ および $\B{j}$ とのスカラー積を取り $\lambda$ を消去すると $\DL{ D\sigma = -\gamma(\B{u}\cdot \B{k})-(\B{u}\cdot \B{j}) }$ を得て、式 (11) より $\sigma$ が導ける。

$$
\begin{split}
\sigma = \ff{\G\gamma^2}{4\pi D^2} \left[ \log \ff{2D}{a\gamma}+\ff{1}{2}-C-\log 2\delta\,\right]
\end{split} \qquad(13)
$$

 条件 (10) は、また $\DL{ a \ll \ff{D}{\gamma^2} }$、すなわち $a\ll\rho$ をも含意することに注意せよ。

 この $\sigma$ の結果(ただしカットオフ・パラメータは (2) で与えたもの)は、次節で議論する柱状渦(columnar vortex)のらせん振動に対する Kelvin 理論と照合して検証できる。

 Moore [1972] は、航空機後方の随伴渦のモデルである、逆回転する渦糸対の有限振幅振動を計算するためにカットオフ近似を用いた。Dhanak と de Bernardinis [1981] は楕円形渦輪の発展を研究した。どちらの計算でも渦糸が交差し、その時点で計算は無効となるため、計算を続けるには場当たり的な「渦糸の切断と再結合」の仮説が必要になる。

脚注

  1. この反論は、古典的渦糸が量子化渦線の発展をモデル化するために用いられ、かつ $a$ を原子間隔程度のオーダーに取る液体ヘリウムでは、おそらく最も深刻ではない。しかしこの場合でも第二・第三の反論は依然として当てはまる。
  2. Widnall, Bliss and Zalay [1971] は、整合漸近展開(matched asymptotic expansions)を用いて、ほぼ直線の渦に対する結果を得た。別法は §4 で与える。
  3. 実験的には、これは実際に起こるようである。簡単な理論を作ろうとする試みが Saffman [1990] によってなされている。
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