幾人かの研究者は、非圧縮・非粘性流体の運動がハミルトニアン系であり、そして適当な多様体上で運動を記述する Lie-Poisson 括弧が与えられることを示している(Marsden & Weinstein [1983])。しかしながら、一般の系についてハミルトン系の時間発展を記述する正準座標を見出せるかについては現時点では未解決である。
コアが一様ないしは停滞している薄い渦輪の場合、Roberts & Donnelly [1970] は水力学的インパルスと渦輪の位置が次の意味で正準であることを示している。なお、$E$ はエネルギーである。以下では、この結果が任意の内部構造を持つコアに対しても当てはまることを示していく。
$$
\begin{split}
U = \ff{\del E}{\del I}
\end{split} \qquad(1)
$$
薄いコアを持つ渦輪については、$E$ と $I$ は(3.21)と(3.10)で与えている。我々は、体積と循環が保存されるようないくつかの変分について考察することにする。さて、コア内にて $\DL{s=\ff{r}{a}}$ と定めることにする。
ここに、コア周りの回転速度は $\DL{ v_{\q}=\ff{\G(s)}{2\pi sa} }$ と置けて、また、軸方向速度を $w(s)$ と表すことにする。さらに、渦輪の軸周辺とコア周辺の循環の保存則は $\delta\,\G(s)=0,\, \delta(w R)=0$ と表現されることになる。特に、$\delta\,\G = 0$ であり、さらに、体積保存則から $\delta(Ra^2)=0$ が成り立つ。そして、エネルギーについては、
$$
\begin{split}
E = \ff{1}{2}R\G^2 \left( \log\ff{8R}{a}-2 \right)+\ff{1}{2}R\int_0^1 \ff{\G(s)^2}{s}\diff s+2\pi^2 Ra^2\int_0^1 sw^2\,\diff s
\end{split} \qquad(2)
$$
さらに、
$$
\begin{split}
\delta E &= \ff{1}{2}\G^2 \left( \log\ff{8R}{a}-2 \right)\delta R+\ff{1}{2}R\G^2\left( \ff{\delta R}{R}-\ff{\delta a}{a} \right)+\ff{1}{2}\delta R \int_0^1 \ff{\G(s)^2}{s}\diff s \EE
&\quad+2\pi^2(a^2\delta R+2aR\delta a)\int_0^1 sw^2\,\diff s+2\pi Ra^2 \int_0^1 2sw\,\delta w\,\diff s
\end{split} \qquad(3)
$$
となる。
今、$\DL{\ff{\delta a}{a}=-\ff{1}{2}\ff{\delta R}{R},\, \ff{\delta w}{w}=-\ff{\delta R}{R} }$ であり、これらを(2)に適用すると、以下を得る。また、$\delta I = 2\pi\G R\,\delta R$ を用いれば(1)が得がれる。
$$
\begin{split}
\ff{\delta E}{\delta R} = 2\pi \G R U
\end{split} \qquad(4)
$$
コアが空洞(例えばキャビテーション)のとき、$v_{\q}=0$ かつ $w=0$ であり、さらにコア内の圧力 $p$ は一定となる。しかしながら、コアの体積は変化する。圧力の主要項としてはこのようになる。(右辺第二項はコア周りの循環による静圧低下を表す)
$$
\begin{split}
p = p_{\infty}+\ff{\G^2}{8\pi^2a^2}
\end{split} \qquad(5)
$$
$\delta p=0$ のとき、コア半径は一定となる。なぜなら、$\delta a=0$ であるため。もし、コア体積を $V=2\pi^2 Ra^2$ とすると、$\DL{\ff{\delta V}{V} = \ff{\delta R}{R} }$ となる。空洞コアについては保有しているエネルギーは、空洞コアの運動エネルギーと圧縮の位置エネルギーの和としてこのようにできる。
$$
\begin{split}
E = \ff{1}{2}R\G^2 \left( \log\ff{8R}{a}-2\right)+(p_{\infty}-p)V
\end{split} \qquad(6)
$$
これの変分を取ると、以下が得られる。($U$ は中空コアの移動速度)
$$
\begin{split}
\delta E &= \ff{1}{2}\G^2\left( \log\ff{8R}{a}-2\right)\delta R+\ff{1}{2}R\G^2 \ff{\delta R}{R}+\ff{\G^2}{8\pi^2 a^2}\delta V \EE
&= \ff{1}{2}\G^2\left( \log\ff{8R}{a}-2\right)\delta R = U \delta I
\end{split} \qquad(7)
$$
このハミルトン表示は、輪が常に円形を保つという前提に依存しているため、相互作用で輪が変形する一般の問題(他の輪や物体との干渉を含む)には十分ではない。ただし、同軸・軸対称を保つリープフロッグ運動の解析には用いることができる。2つの輪の中心を $X_1,X_2$、半径を $R_1,R_2$ とすると、以下の正準方程式を得る。
$$
\left\{
\begin{split}
&\, \dot{X}_1 = \ff{\del H}{\del I_1} \EE
&\, \dot{X}_2 = \ff{\del H}{\del I_2} \EE
&\, \dot{I}_1 = -\ff{\del H}{\del X_1} \EE
&\, \dot{I}_2 = -\ff{\del H}{\del X_2}
\end{split} \qquad(8)
\right.
$$
ただし、$I_1 = \pi \G_1 R_1^2,\, I_2=\pi\G_2 R_2^2$ である。ハミルトニアン $H$ は運動エネルギーの和として、
$$
\begin{split}
H = T_1+T_2+T_{12}
\end{split} \qquad(9)
$$
と表示される。なお、$T_1,T_2$ は各渦輪が個別に持つ運動エネルギーで、$T_{12}$ は相互に誘起されたことにより生じる運動エネルギーで、$\DL{\pi\int (\om_1\psi_1\,\diff A_1+\om_2\psi_2\,\diff A_2)}$ で表示される。また、次の形のグリーン関数表示もできる。
$$
\begin{split}
T_{12} = 2\pi \G_1\G_2\, G(X_1-X_2,R_,R_2)
\end{split} \qquad(9)
$$
リープフロッグ現象の実験的な観察は、Oshima, Yamada, Matsui [1987] で説明されている。
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