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3.10 二次元でのインパルス(Impulse in two dimensions)

 流れ量がデカルト座標系(通常 $z$ または $x_3$ で表される)に無関係である場合、流れは二次元と言われる。

 そのとき、横方向の速度成分 $(u, v)$ と渦度の $z$ 成分 $\om_z$ の運動方程式は、$z$ 軸に沿った速度 $w$ と渦度の横方向成分からは切り離される。そのため、平面内の運動については、一般性を失うことなく $w = 0$ で渦度が運動平面に垂直であると仮定できる。$\om_z$ が本質的に保存されたスカラー(渦線の伸張による増幅がない)であり、一つのスカラー(流線関数)が $u$ と $v$ の両方を決定するという事実により、問題は解析的にも数値的にもより扱いやすくなる。二次元流れは渦運動に捧げられた理論的注目の大部分を引き付ける。

 前の議論の多くは、修正を加えることで、二次元の渦にも適用できるが、渦度場の範囲が三次元的意味で無境界になるため、いくつかの変更が必要となる。

 $z$ 方向の渦度によって平面内で誘導される速度成分に対する(1.1.5)に類似の表現を考えよう。これは、$z$ に関する積分を実行することによって得ることができる(いわゆる降下法)。$\B{r}$ を二次元ベクトル $(x,y$)、$\B{R}$ を三次元ベクトル $(x,y,z)$ で表すと:

$$
\begin{split}
\int \ff{(\B{R}-\B{R}’)}{| \B{R}-\B{R}’ |^3}\diff z’ = \ff{ 2(\B{r}-\B{r}’) }{| \B{r}-\B{r}’ |^3}
\end{split}
$$

例えば、$\B{\om} = \om\,\B{k}$ の場合を考えよう。これは式(1.1.5)の類推から、

$$
\begin{split}
\B{u}_V(\B{r}) = \ff{1}{2\pi} \int \om(\B{r}’)\B{k}\times \ff{ (\B{r}-\B{r}’) }{| \B{r}-\B{r}’ |^2} \diff S’ \qquad(1)
\end{split}
$$

 これは二次元の公式であることに注意が必要である($\diff S’ = \diff x’ \diff y’$)。§1.1の条件(vi)には抵触するように思われるが、$\text{div}\,\B{u}_V = 0$ および $\rot\,\B{u}_V = \om \B{k}$ であることが、$\om$ が有限範囲(または平面内で指数的に小さい)である場合には、三次元で使用される方法と同様に、妥当性が容易に検証できる。  

 なお、§1.1の条件(v)は、渦度が境界に対して、自動的に接線方向を向くため満たされている。あるいは、(ラグランジュ)流線関数 $\psi(x,y,t)$ を導入すれば、平面内の運動のベクトルポテンシャルは $\psi \B{k}$ と表せて、つまり、

$$
\left\{
\begin{split}
&\, u = \psi_y = \ff{\del \psi}{\del y} \EE
&\, v = \psi_x = -\ff{\del \psi}{\del x}
\end{split}
\right. \qquad(2)
$$

と表現できる。

 さらに、$\psi$ が存在することは、非圧縮性流体での連続方程式によって保証される。

\begin{split}
\div\,\B{u} = \ff{\del u}{\del x}+\ff{\del v}{\del y} = 0 \qquad(3)
\end{split}

 また、曲線 $\psi = const.$ は流れの(瞬間的な)流線となる。また、$\rot \B{u}$ を評価すると:

\begin{split}
\rot\,\B{u} = \ff{\del v}{\del x}-\ff{\del u}{\del y} = -\left( \ff{\del^2 \psi}{\del x^2}+\ff{\del^2 \psi}{\del y^2} \right) = -\nabla^2 \psi \qquad(4)
\end{split}

を我々は得る。ここに、$\nabla^2$ は二次元ラプラシアンであり、またポアソン方程式(4)の解はこのようになる。

\begin{split}
\psi(\B{r}) = -\ff{1}{2\pi}\int \om’\log |\B{r}-\B{r}’|\,\diff S’ \qquad(5)
\end{split}

積分記号下での微分(正当化可能な手順)によって、

$$
\left\{
\begin{split}
&\, u = -\ff{1}{2\pi}\int \ff{ \om'(y-y’) }{|\B{r}-\B{r}’|^2} \,\diff S’ \EE
&\, v = \ff{1}{2\pi}\int \ff{ \om'(x-x’) }{|\B{r}-\B{r}’|^2} \,\diff S’
\end{split}
\right. \qquad(6)
$$

これは式(1)の別表現となる。また、一様流体に対しては、ヘルムホルツの方程式が次の簡単な形を取ることに注目せよ。

\begin{split}
\ff{D \om}{D t} = \ff{\del \om}{\del t}+u\ff{\del \om}{\del x}+v\ff{\del \om}{\del y} = \B{k}\cdot \rot\,\B{F} \qquad(7)
\end{split}

 $\B{F} = \B{0}$ の場合に渦線が流体と共に移動するという記述は、渦度が流体粒子に従って保存されることを言ってることを思い出す必要がある。

 ところで二次元運動で非ゼロ渦度を持つ平面内の有限領域が、非回転流体に囲まれている場合、これを渦と呼ぶのであった。一つの例は、§2.3で議論された一様直線渦フィラメントである。渦度が曲線に沿って集中している場合、渦層が生まれる。一方、渦度が点に集中している場合、すなわち:

\begin{split}
\om = \Gamma \delta(x-x_0)\delta (y-y_0) = \Gamma\delta (\B{r}-\B{r}_0) \qquad(8)
\end{split}

という直線渦の極限を表現でき、平面内の運動に対しては便宜的に強さ $\Gamma$ の点渦と呼ばれ、その流線関数は:

\begin{split}
\psi(\B{r}) = -\ff{\Gamma}{2\pi}\log |\B{r}-\B{r}_0| \qquad(9)
\end{split}

という形を持ち、§2.3で議論したように、点渦は十分に意味のある力学的概念である。

 無境界な流体では、(1)で与えられる $\B{u}_V$ は有限範囲の渦度場によって生成される唯一の速度となる。無限遠での速度の漸近挙動を決定するためには、次のことに注意する必要がある。

\begin{split}
\log |\B{r}-\B{r}’| = \log r-\ff{\B{r}\cdot \B{r}’}{r^2}+O\left( \ff{1}{r^2} \right) \qquad(10)
\end{split}

ここに、$r = |\B{r}|$ である。(5)への代入により:

\begin{split}
\psi(\B{r}) \sim -\ff{\Gamma_{\infty}}{2\pi}\log r+ \ff{(\B{M}\times\B{r})\cdot \B{k}}{r^2}+O\left( \ff{1}{r^2} \right) \qquad(11)
\end{split}

ここに、

\begin{split}
\Gamma_{\infty} = \int \om\,\diff S,\quad \B{M} = \ff{1}{2\pi}\int \om\B{r}\times \B{k}\,\diff S \qquad(12)
\end{split}

 式(11)は、無限遠では流れが強さ $\Gamma_{\infty}$ の循環と、強さ $\B{M}$ の二次元双極子から成ることを示している。後者は次によって与えられる速度ポテンシャルと流線関数を生じる。

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \phi = -\ff{ \B{M}\cdot \B{r} }{r^2} \EE
&\, \psi = \ff{(\B{M}\times\B{r})\cdot \B{k}}{r^2}
\end{split}
\right. \qquad(13)
$$

 総渦度、または等価的に無限遠での循環は消失する必要は無いが、これは運動の不変量となる。つまり、

\begin{split}
\ff{\diff \Gamma}{\diff t} = \int \ff{\del \om}{\del t}\diff S = \int (\B{k}\cdot \rot\,\B{F}-\B{u}\cdot\nabla\om)\diff S = \oint_{\infty}\B{F}\cdot \diff \B{s}+\oint_{\infty}(\B{u}\cdot \B{n})\om\,\diff s = 0 \qquad(14)
\end{split}

 外力と渦度が無限遠で消失する場合、インパルスおよび全体としての流れの特性的な他の量(エネルギーなど)は、$z$ 方向の単位長さあたりの観点から理解され、したがって、それらの次元は三次元での対応する量とは異なる。インパルスは(2.9)を満たす不変量とされ、次のように見出される。

\begin{split}
\B{I} = \int \om\B{r}\times \B{k}\,\diff S \qquad(15)
\end{split}

 三次元表現(2.8)に存在する因子 $\DL{ \ff{1}{2} }$ の欠如に注意する必要がある。この結果は二次元オイラー方程式の操作から直接導ける。(欠けている因子は、渦線が二次元流れで閉じていないことに起因する。単位長さの流れが考慮され、渦線が端平面 $z=0$ と $z=1$ で閉じられている場合、端平面からの三次元の積分(2.8)への寄与が、二次元の公式の欠けている因子を正確に説明できる。)静止から運動を瞬間的に生成するために必要な衝撃力 $\B{f}$ を評価する観点からは、二次元での恒等式を使用できる。

\begin{split}
\int \B{r}\times \rot\,\B{a}\,\diff S = \int \B{a}\,\diff S-\oint \B{r}\times (\B{n}\times \B{a})\diff s \qquad(16)
\end{split}

 (類似の三次元恒等式(2.11)との因子 $-2$ の違いに注意せよ。)$\B{a} = \B{f}$ を代入し、$\om \B{k} = \rot \B{f}$ に注意して:

\begin{split}
\int \B{f}\,\diff S = \int \om \B{r}\times \B{k}\,\diff S = \B{I} \qquad(17)
\end{split}

が得られる。

 ここで $\Gamma_{\infty} = 0$ と仮定できる。そうでなければ衝撃力は有限範囲とならず、また等高線積分が消失しないかもしれない。一方、$\Gamma_{\infty} \neq 0$ の場合、無限遠では、$\B{f}\sim \DL{\ff{1}{2\pi r}\B{\q}} となる。なぜなら、$\DL{ \oint \B{f}\cdot\diff \B{s} = \int \om \diff S = \Gamma_{\infty} }$ のため。

 $\Gamma_{\infty}\neq 0$ の場合であっても、定義(15)を適用できるが、インパルスは原点の選択に依存する。しかし、(14)より原点の選択に依存する寄与は、時間に無関係のため不変性は保たれる。$\Gamma_{\infty}\neq 0$ の場合は、運動量と運動エネルギーが無界ゆえに、物理的にやや非現実的であり、そのため応用では反対の強さの他の渦の存在を念頭に置くべきである。
 

 さらに、角インパルスの恒等式(5.1)は二次元でも三次元と同じ形を持つため、同じ表現の $z$ 成分によってスカラー角運動量を定義できる。つまり、

\begin{split}
\B{A} = \int \B{r}\times \rot \B{f}\,\diff S = -\ff{1}{2}\int r^2\om \,\diff S \qquad(18)
\end{split}

 インパルス $\B{I}_V$ と角インパルス $\B{A}_V$ を持っている、外部速度場 $\B{u}_e$ 中で面積 $S_V$ を占める孤立単一渦に対しては、後の§7の結果が依然として成立する。つまり、

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \ff{\diff \B{I}_V}{\diff t} = \int \B{F}\,\diff S_V+\int \om\B{u}_e\times \B{k}\,\diff S_V \qquad(19) \EE
&\, \ff{\diff \B{A}_V}{\diff t} = \int \B{r}\times \B{F}\,\diff S_V+\int \om\B{r}\times (\B{u}\times \B{k})\,\diff S_V \qquad(20)
\end{split}
\right.
$$

 これの証明は、三次元の場合と同様に進む。渦度場が有限範囲かつ速度が無限遠では $O\left(\ff{1}{r} \right)$ のオーダーの場合、無限遠での等高線積分はすべて消失する。(7.15)(7.18)の使用により、二次元では渦力の $\DL{ \ff{\diff \B{I}_V}{\diff t} }$ と $\DL{ \ff{\diff \B{A}_V}{\diff t} }$ への寄与を囲む等高線上の速度の積分として、または瞬間的に運動学的に同一の定常運動で、封じ込め壁上の力とカップルの観点から表現できる。渦内の総渦度 $\Gamma$ は(14)から一定と言える。

 外部速度場がない状況で、形状変化なしに速度 $\B{U}$ で定常に移動する単一渦の場合、渦と共に移動する座標系で作業すると(19)から、運動を維持するための総外力 $\Gamma \B{k}\times \B{U}$ が必要であることが従う(§2.3§1参照)。二次元では、総渦度 $\Gamma = \DL{\int \om\,\diff S_V} $ が消失する理由がないので、この場合渦度の重心を従来の公式で定義できる。つまり、

\begin{split}
\overline{\B{R}_V} = \int \ff{\om \B{r}}{\Gamma}\diff S_V = \ff{\B{k}\times \B{I}_V}{\Gamma},\quad \B{I}_V = \Gamma \overline{\B{R}_V} \times \B{k} \qquad(21)
\end{split}

 しかし、この定義は三次元の渦に使用される(9.2)と単純には連携していない。

\begin{split}
\B{R}_V = (\B{i}\overline{Y_V}+\B{j}\overline{Y_V} )\int \ff{\om xy}{\Gamma \overline{\B{R}_V}^2}\,\diff S_V \qquad(22)
\end{split}

 二次元での重心公式(21)は、それに対して測定されたインパルスがゼロであるという性質を持つ。また、重心に対する角インパルスは最小で、回転半径 $R_g$ を以下のように定義できる。

\begin{split}
\Gamma R_g^2 = \int |\B{r}-\overline{\B{R}_V}|^2 \om\,\diff S_V \qquad(23)
\end{split}

なぜなら、以下が成立するため。

\begin{split}
A_V = -\ff{1}{2}\Gamma\left(\overline{X_V}^2+\overline{Y_V}^2 \right)-\ff{1}{2}\Gamma R_g^2 \qquad(24)
\end{split}

そして、$\DL{ \ff{\diff \overline{X_V}}{\diff t} }$ と $\DL{ \ff{\diff \overline{Y_V}}{\diff t} }$ が(19)より従うので、方程式(20)は次の形で書ける。

\begin{split}
\Gamma \ff{\diff R_g^2}{\diff t} = -2\B{k}\cdot \int \left( \B{r}-\overline{\B{R}_V} \right)\times \B{F}\,\diff S_V+2\int \om\left( \B{r}-\overline{\B{R}_V} \right)\cdot \B{u}_e\,\diff S_V \qquad(25)
\end{split}

 $R_g$ は、外力と渦度の重み付き外部速度が、重心についてモーメントを持たない場合一定であることに注意が必要である。また、外力がない場合の二次元での重心の速度 $\overline{\B{U}_V}$ は(19)と(21)から、渦度重み付き渦速度の重心であることが従う(Betz [1932])。

\begin{split}
\overline{\B{U}_V} = \int \ff{\om\,\B{u}_e}{\Gamma}\,\diff S \qquad(26)
\end{split}

 この公式は $\om$ が一定の場合特に有用となる。しかし、二次元流れでの粘性の効果はわずかに異なる。無境界流れでは、$\B{F} = \nu \nabla^2 \B{u}$ とすると、(11)で漸近的に与えられる形を持つ速度に対して、(6.2)の境界積分が消失することが分かるため、総インパルス $\B{I}$ は不変のままとなる。一方、総角インパルス $\B{A}$ は不変ではない。(6.3)の右辺の2項は等しい寄与、$-\nu \Gamma_{\infty} \B{k}$ を与えるので、全分布の角インパルスは次の方程式に従うことになる。

\begin{split}
\ff{\diff A}{\diff t} = -2\nu \Gamma_{\infty} \qquad(27)
\end{split}

それゆえ、

\begin{split}
R_g^2 = 4\nu t+const. \qquad(28)
\end{split}

 $R_g$ が定義される場合は、角インパルスの一定割合での減少は、二次元で無限遠の円を横切る粘性応力による角運動量の有限移送によるものと見なせる。二次元での運動量とインパルスの関係は、$\B{a} = \B{u}$ として恒等式(16)から従う、

\begin{split}
\int \B{u}\,\diff S = \int \om \B{r}\times \B{k}\,\diff S+\oint \B{r}\times (\B{n}\times \B{u})\diff s \qquad(29)
\end{split}

面積が半径 $R$ の大きな円として考えて、その上で、

\begin{split}
\B{u}\sim \ff{\B{I}R^2+2(\B{I}\cdot \B{r})}{2\pi R^4} \qquad(30)
\end{split}

すなわち、$\Gamma_{\infty} = 0$ の場合、この結果が得られる((2.14)と比較)。

\begin{split}
\lim_{R\to \infty}\int_{r<R}\B{u}\diff S = \ff{1}{2}\B{I} \qquad(31)
\end{split}

 したがって、二次元では、適用されたインパルスの半分が無境界流体の運動量に伝達され、残りの半分は無限遠に送達されることとなる。

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