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2.3 線渦(Line vortices)

 かなりの有用性を持つ渦度の特異分布は、無限大の渦度が線上に集中しているようなものである。ただし、線が貫く閉曲線周りの循環は有限となるとする。

 このような分布は、線渦(渦線ではない)と呼ばれ、その強度 $\Gamma$ は、線周りの閉曲線の循環である。線渦が同じ方向に1回通る場合の特定の閉曲線とは無関係であり、依存しない。線渦は、渦フィラメントを強度が一定に保ちながら、曲線に収縮するような極限過程の結果と見なせる。形式的には、渦度は次の様に表せる。

\begin{split}
\B{\om} = \Gamma\, \delta(n)\delta(b)\B{s} \qquad(1)
\end{split}

 ここに、$\B{s}$ は曲線に沿った単位ベクトル(接線ベクトル)を表し、$\\B{n},\B{b}$ は法線ならびに従法線ベクトルを表すとする。

 空間曲線 $\B{x} = \B{R}(\sigma)$ について考えよう。$\sigma$ は曲線に沿った位置を指定するためのパラメーターである。$\sigma = s$($s$ は曲線に沿った距離)のとき、フレネ・セレの公式を適用できて、以下が言える。

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \ff{\diff \B{R}}{\diff s} = \B{s} \EE
&\, \ff{\diff \B{s}}{\diff s} = \ff{\B{n}}{\rho} \EE
&\, \ff{\diff \B{n}}{\diff s} = -\ff{\B{s}}{\rho}+\tau \B{b} \EE
&\, \ff{\diff \B{b}}{\diff s} = -\tau \B{n}
\end{split}
\right. \qquad(2)
$$

 3つ組 $(\B{s},\B{n},\B{b})$ は、相互に直交している右手系を成している。また、曲線の曲率半径は $\rho$ で表され、$\tau$ は曲線のねじれ率で接平面の回転率を表す。式(1)を式(1.1.5)に代入して、$\diff \B{x}’=\diff s\diff n\diff b$ を用いると以下の”ビオ・サバールの法則”を得る。

\begin{split}
\B{u}_v(\B{x}) = \ff{\Gamma}{4\pi}\oint \ff{\B{s}\times (\B{x}-\B{R}(s) ) }{ |\B{x}-\B{R}(s)|^3 }\diff s = \ff{\Gamma}{4\pi}\text{rot} \left( \oint \ff{ \diff \B{s} }{ |\B{x}-\B{R}(s)|} \right) \qquad(3)
\end{split}

 上式は、閉曲線 $\B{R}(s)$ に沿った強度 $\Gamma$ の線渦により誘導される速度 $\B{u}_v$ について述べている。式(3)の最終項は、線渦のベクトルポテンシャルがかなり単純な形式を持つことを教えてくれる。

 ところで、渦菅は閉じているか境界で終わらなければならない。したがって、線渦についても同じことを言えなければならない。なお、式(3)の積分は常に閉曲線に沿っていなければならず、そうでなければ速度場 $\B{u}_v(\B{x})$ はソレノイダルとはならない。

 壁で終わる渦菅は1.1節の条件(v)に違反しており、境界間のギャップに跨る渦は、何らかの方法で閉じられない限り公式を適用できない。(2.4節でも述べる)加えて、この条件の下で式(3)は線の各要素 $\diff s$ が距離 $r$ 離れた点 $P$ で速度 $\Gamma \DL{ \ff{\sin \chi \diff s}{4\pi r^2} }$ を誘導すると述べていると理解できる。ここで、$\chi$ はある線素から $P$ までの角度であり、速度の方向はこれらの方向に垂直であると言える。

 ストークスの定理の適用により、式(3)は、線渦で境界された面 $S$ 上の積分に変換できる(曲線が縮約可能である場合に限られることは言うまでもない)。このとき、

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \oint \diff \B{s}\times \B{a} = \int \big[(\nabla \B{a})\cdot \diff \B{S}-\text{div}\B{a}\,\diff \B{S}\, \big] \EE
&\, \underset{R}{\text{div}} \ff{\B{x}-\B{R}}{ |\B{x}-\B{R}|^3 } = 0 \EE
&\, \left( \ff{\del}{\del \B{x}}+\ff{\del}{\del \B{R}} \right)\ff{\B{x}-\B{R}}{ |\B{x}-\B{R}|^3 }=0
\end{split}
\right. \qquad(4)
$$

 我々は、式(3)をこのように書くことができる。($\B{a}=\DL{ \ff{\B{x}-\B{R}}{|\B{x}-\B{R}|^3} } $ と置いている)

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \B{u}_v=-\ff{\Gamma}{4\pi}\nabla \Omega \EE
&\, \Omega(\B{x}) = \int_S \ff{\B{x}-\B{R}}{|\B{x}-\B{R}|^3}\cdot\,\diff \B{S} \EE
\end{split}
\right. \qquad(5)
$$

 ここで $\B{R}$ は、面 $S$ 上での位置ベクトルを表す。量 $\Omega$ は $\B{x}$ にて線渦により張られる立体角であり、(5)は線渦により誘導される流れの速度ポテンシャルが単に $\DL{-\ff{\Gamma \Omega}{4\pi}}$ と表現されることを示している。

 もし、渦の外側の流体が占める領域が単連結でないなら、速度ポテンシャルは単一の値とはならない。この場合、$\Omega$ は渦の周りを一度周ると $4\pi$ だけ増加する。また、渦により仕切られた面から成る障壁を導入することで、単一の値とすることができ、この面を横切って速度ポテンシャルは $-\Gamma$ だけ跳躍する。

 ところで、$\B{R}$ にある、強度が $\B{m}$ の双極子は位置 $\B{x}$ にて速度ポテンシャル $\DL{ -\B{m}\cdot \ff{\B{x}-\B{R}}{| \B{x}-\B{R} |^3} }$ を生成する。そのため、線渦は運動学的には一様な密度 $\DL{ \ff{\Gamma}{4\pi} }$ の双極子の面分布と等価と考えられる。また、双極子の軸は境界の法線に沿って整列している。つまり面積が $\delta \B{S}$ で強度 $\Gamma$ の無限小線渦は、強度が $\Gamma \delta S$ の無限小双極子と等価である。

 速度誘導則を表す式(1.1.5)ひいては、ビオ・サバール則(式(3))は、曲率半径が $R_{\infty}$ の大きな半円で閉じられた曲線を想像できるため、無限に長い線渦のモデルとして用いられる。また、この部分の寄与が $O(R_{\infty}^{-1})$ のオーダーであり、すなわちゼロであることが言える。

 最重要な特別な場合は、無限に長い直線線渦である。この場合、誘導速度の流線はその直線を軸とする円であり、方位角速度は次のようになる。

\begin{split}
\ff{\Gamma}{2\pi r}
\end{split}

 渦それ自身の速度場には境界は無いが、2次元流れ(=渦の軸に垂直な平面)においては力学的な矛盾はなく、渦は有限速度で移動することが分かっている。これは通常、流体の速度から無限大を減算した値となる。

 曲線の線渦は、有用な運動学的な概念だが、直感的な動力学的な極限としては存在しない。その理由は、線渦の強度が一定に保たれる場合、曲線状の渦菅の断面がゼロに近づくにつれて、その速度も無限大になるためである。この特異性は $\B{x}$ が渦上の点に近づくときのビオ・サバールの法則の特異性と類似している。

 ここで、ある点を原点として、曲線に垂直に近づくとして $x,y,z$ 軸を $\B{n}, \B{b}, \B{s}$ に平行にとると、以下を得る。

\begin{split}
\B{R} = s\left( \ff{\del \B{R}}{\del s} \right)_0+\ff{1}{2}s^2\left( \ff{\del^2 \B{R}}{\del s^2} \right)_0+\ff{1}{6}s^3\left( \ff{\del^3 \B{R}}{\del s^3} \right)_0+\cdots \qquad(6)
\end{split}

 導関数は原点でのフレネ・セレの公式を通して $\B{n},\B{b},\B{s}$ および $\rho, \tau$ の導関数でも表現できる。すなわち、

\begin{split}
\B{R} = s\B{s}_0+\ff{1}{2}\left( \ff{s^2}{\rho_0} \right)\B{n}_0+O\left( \ff{s^3}{\rho^3} \right) \qquad(7)
\end{split}

ともできる。

 いくらかの初等的な計算の後、式(3)の第1項の積分内の被積分関数は次の様に振舞うことが分かる:

\begin{split}
\ff{x\B{b}_0-y\B{n}_0}{(r^2+s^2)^{3/2}}\left[1+\ff{3xs^2}{2(r^2+s^2)\rho_0} \right]+\ff{ys\B{s}_0+\ff{1}{2}s^2\B{b}_0 }{(r^2+s^2)^{3/2}\rho_0 }+O(\rho_0^{-2}) \qquad(8)
\end{split}

ここに、$r=\sqrt{x^2+y^2}$ は線渦からの最短距離を表す。特異な挙動を決定するためには式(8)を(3)に代入し、積分範囲 $-\eps < s <\eps$ で計算して $\eps\to 0, \DL{\ff{\eps}{r}\to \infty } $ の極限を考えると、次の極限を得る。

\begin{split}
\B{u}_{VO}&\sim \ff{\Gamma}{2\pi}\left( \ff{x}{r^2}\B{b}_0-\ff{y}{r^2}\B{n}_0 \right)-\ff{\Gamma \log r}{4\pi \rho_0}\B{b}_0 \EE
&\qquad -\ff{\Gamma}{4\pi \rho_0}\left( \ff{y^2}{r^2}\B{b}_0+\ff{xy}{r^2}\B{n}_0 \right)+\ff{\Gamma \log\eps}{4\pi \rho_0}\B{b}_0 \EE
&\qquad\quad +\lim_{\eps\to 0}\ff{\Gamma}{4\pi}\oint_{ |s|>\eps } \ff{\B{s}\times \big(\B{R}(s_0)-\B{R}(s) \big) }{ |\B{R}(s_0)-\B{R}(s)|^3 }\diff s+O\left( \ff{\Gamma r}{\rho_0^2} \right) \qquad(9)
\end{split}

 上の第1項は直線線渦の接線方向周りの循環である。第2項は、曲率による従法線方向の無界寄与(?)である。第3項は有界だが、 $r=0$ では連続ではない。第4項は $\eps\to 0$ のとき最終項からの特異性の影響を打ち消す。

 これを確かめるため、最終項について原点での値が $\DL{ \ff{\Gamma}{4\pi}\int_{s\neq 0} \ff{\B{s}\times \B{r}}{r^3}\diff s }$ であることに注意して、式(7)に代入するとこれの被積分関数が $\DL{ \ff{\B{b}_0}{2\rho_0 s} }$ のように特異であることを示し、ゆえに積分は $-\DL{ \ff{\Gamma\,\B{b}_0}{4\pi \rho_0}\log \eps_0 }$ に漸近して、式(9)の第4項が打ち消される。

 例えば、線渦が半径 $\rho_0$ の円である場合は、楕円関数の詳細な評価から(Lamb 1932)、式(9)は第4項の $\eps$ を $8\rho_0$ として、積分を削除(?)したときに与えられる誤差で速度が与えられることが示されている。

 $r\to 0$ のとき、従法線に沿った非循環速度が対数的に無限大に向かうため、曲線線渦(断面がゼロの渦菅)が有用な動力学的なモデルになることを難しくしている。ただし、この制約は $\rho_0\to \infty$ での直線線渦には適用されず、境界や他の渦により生成される外部速度に、無限大の循環部分を差し引いた自己誘導速度を加えた有限速度で移動する。

 この結果は通常、ヘルムホルツの法則の直接的な結果として述べられるが、直線線渦のモデルでは渦度分布が特異であるため、渦核に作用する外部からの特異な非保存力により生じる変化を調べることも興味深く、運動量保存則に基づく直接的な論証を与えることが適切である。

 さて、$z$ 軸に平行な直線線渦が速度成分 $(U_v,V_v)$ で移動する場合について考えよう。このとき、渦の中心を原点として渦と共に移動する移動座標系を設定するとする。その中心ある瞬間で、渦の中心と一致しているような無限小の円(半径 $\eps$)内の速度ポテンシャルは、

\begin{split}
\phi = \ff{\Gamma \q}{2\pi}+Ur\cos\q+Vr\sin \q+O(\eps^2) \qquad(10)
\end{split}

となる。ここに、$(U,V)$ は渦の速度場における有限成分である。非定常な渦無し流れについての圧力方程式(1.9.6)より、この小円の境界上の圧力は、

\begin{split}
p &= -\ff{1}{2}(\text{grad}\phi)^2-\ff{\del \phi}{\del t} \EE
&\sim -\ff{\Gamma^2}{8\pi^2\eps^2}+\ff{\Gamma}{2\pi \eps}\big[ (U-U_v)\sin\q-(V-V_v)\cos\q \big] \qquad(11)
\end{split}

と与えられる。空間に固定された点では $\DL{ \ff{\del \q}{\del t}=\ff{U_V\sin\q-V_V\cos\q}{r} }$ となる。境界上の圧力により、円内の流体に加えられる力は、以下のオーダーとなる。

\begin{split}
\oint_{r=\eps} p\B{n}\,\diff s = -\ff{1}{2}\Gamma \big[(U-U_V)\B{j}-(V-V_V)\B{i} \big] \qquad(12)
\end{split}

ここに、$\B{n}=(-\cos\q,-\sin\q)$ は内向きの法線である。固定円内の流体の運動量の変化率は、渦が円に対して相対的に移動して、境界を横切って運動量束があるため非ゼロである。このとき、相対運動による増加率は、

\begin{split}
\oint_{r=\eps} \ff{\Gamma}{2\pi \eps} \Big( \cos\q\B{j}-\sin\q\B{i} \Big)\Big( -U_V\cos\q-V_V\sin\q \Big) \diff s \qquad(13)
\end{split}

で表せて、そして円周上の運動量束は以下で表せる。

\begin{split}
\oint_{r=\eps} \ff{\Gamma}{2\pi \eps} \Big( \cos\q\B{j}-\sin\q\B{i} \Big)\Big( U\cos\q+V\sin\q \Big) \diff s \qquad(14)
\end{split}

これらの2つの合計は、正味の運動量の増加率:

\begin{split}
\ff{\Gamma}{2}(U-U_V)\B{j}-\ff{\Gamma}{2}(V-V_V)\B{i} \qquad(15)
\end{split}

となり、これは円周上で作用する圧力場により供給されなければならない。式(15)を(12)と等しいと置くと、以下が得られる。

$$
\left\{
\begin{split}
&\, U_V=U \EE
&\, V_V=V
\end{split}
\right. \qquad(16)
$$

したがって、直線線渦は流体と共に移動する。このように、線渦は一貫した動力学的な概念を与えてくれる。

 我々は、以下のように表される直線線渦:

\begin{split}
\B{\om}=\delta(\B{x}-\B{X}(t))\B{k},\quad \ff{\diff \B{X}(t) }{\diff t}=\nabla\Phi \qquad(17)
\end{split}

は2次元オイラー方程式の「準弱」解であると言える。なお、$\Phi$ は他の渦や境界により誘導される速度ポテンシャルである。渦度、運動量、角運動量が保存され特異な空間分布が回転対称と仮定される場合は、通常の意味での弱解となる。

 渦跳躍と渦層の特異性を持つ可能性のある二次元連続渦度分布を、直線線渦の集合で置き換える近似は、一つのオイラー流をまた別のオイラー流に置き換えることを意味する。置き換え後の流れを置き換え前の流れにどれだけ近づけられるかは、興味深い問題である。その心は、線渦の運動はしばしばハミルトニアン形式の常微分方程式系の積分に帰着できるためである。(第7章3節で詳しく述べる)

 ところで、運動平面内で直線線渦に、単位長さ当たり外力 $\B{F}$ が加えられる場合、運動量の変化は

$$
\left\{
\begin{split}
&\, U_V=U-\ff{F_y}{\Gamma} \EE
&\, V_V=V+\ff{F_x}{\Gamma} \EE
&\, \B{F}= \Gamma( U-U_V )\B{j}-\Gamma( V-V_V )\B{i}
\end{split}
\right. \qquad(18)
$$

の関係となる。これは、よりコンパクトに、

\begin{split}
\B{U}_V=\B{U}+\B{k}\times \ff{\B{F}}{\Gamma} \qquad(19)
\end{split}

とも表現できる。これより、直線線渦は、外力を受けると、流体に対して相対的に移動することが分かる。(渦力を使用しての、別の論証については第3章1節にて説明する)

 さらに、曲線線渦により誘導される速度の式(9)より、曲線渦フィラメントの速度が、その断面半径がゼロに向かう時、その量の対数のように無限大になることが予想される。これはまた、Kelvin の半径 $R$ の円形をした渦フィラメントの速度 $V$ に対する公式からも期待される。これは、(最小次数で)半径 $a$ の円形断面と一様渦度を持つもので、方程式(10.2.1)で与えられる。

 第10章と11章では、渦環と曲線渦フィラメントのさらなる議論を行う。

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