滑らかな閉曲面 $S$ 上にベクトル場 $\B{a}$ の値が以下の条件で与えられているとしよう。
\begin{split}
\int_S\B{a}\cdot \B{n}\,\diff S = 0 \qquad(1)
\end{split}
そうすると、ベクトル場は $S$ の内部にてソレノイダルとなるように拡張できる:
\begin{split}
\text{div}\,\B{a}=0 \qquad(2)
\end{split}
そして、$\B{a}$ の成分は $S$ を横切っても連続であるとする。この拡張は唯一のものではなく、他の無数(無限)の方法でも行うことができる。幾何学的には、表面での場の線を $\B{a}$ に平行な、非交差の滑らかな曲線を結ぶだけで十分であり、内部の場の大きさは場の菅の断面に反比例する。上の式(1)は、出入りする菅の本数が等しいことを保証している。
もし、場の線が $S$ 上で屈折していたならば、$\B{a}$ の法線成分は連続であっても接線成分は不連続となる。これを部分拡張と呼ぶことにしよう。
渦度場 $\B{\om}$ は、任意の閉曲面 $S$ に対して(1)を満たさなければならない。これは、表面を分割する閉曲線に対してストークスの定理を適用することで導ける。したがって、渦度は流体を囲む、あるいは境界とする任意の物体の内部に拡張できる。
渦度場が境界面で $\B{\om}\cdot\B{n}\neq 0$ の場合に拡張されるという理解の下で、速度についての渦度の積分公式(1.1.5)は依然有効である。 第1章1節の条件(v)は、この方法により回避できる(満たされる?)。
誘導速度の式における任意関数 $\nabla\Phi$ は、特定の拡張方法に依存する。一つの方法としては、拡張を物体表面のすぐ外側にある特異面(渦層)に限定することがしばしば便利である。そうすると、$S$ 上で、$\B{\om}\cdot\B{n}=0$ となる。線渦が表面で終わる場合でも、線渦が物体を通り抜ける拡張を施して閉じることができる場合、ビオ・サバールの法則を適用できる。条件(1)は、出入りする線の数が等しいことを保証し、その線はもちろん強度によって重みづけられる。
非圧縮性流体の速度場では、式(1)が $\B{a}=\B{u}$ で満たされるため、一定体積の物体へと拡張できる。(この物体は、剛体である必要も、静止している必要も、定常運動をしている必要も無い)物体内への速度の拡張を $\B{u}_B$ で表すとすると、$\B{\om}=\text{curl}\,\B{u}_B$ は $\B{\om}$ の部分拡張となる。なぜなら、速度の連続性から $\B{\om}$ と $\B{\om}_B$ の法線方向成分が等しいことが言えるためである。そうすると、物体表面は渦跳躍となることが言える。このように速度の部分拡張は、表面上の渦層につながる。それゆえ、この考え方はいくつかの応用に便利である。
物体上で $\B{\om}\cdot\B{n}=0$ の場合、物体外の速度は $\B{u}=\B{u}_V+\nabla\Phi$ の形で表される。この第1項は物体外の渦度により生成され、式(1.1.5)により内部で定義される。第1章1節で議論したように、非回転成分は表面上の法線速度の条件あるいは、何等かの等価の要求を満たすように選ばれる。一定体積の物体内へと拡張するために仮定した、速度場 $\B{u}$ は、$\B{u}_V+\B{u}_I$ が物体内外で連続となるような速度場 $\B{u}_I$ を与える。つまり、物体の存在は渦度場、
\begin{split}
\B{\om}_I=\text{curl}\,\B{u}_I \qquad(3)
\end{split}
で置き換えることができる。このようになるのは、物体内において $\text{curl}\,\B{u}_V=\B{0}$ が成立するためである。
さて、我々は $\B{\om}_I$ の分布のことを渦像と呼ぶことにしよう。元の渦度場は(全ての物体に対して)渦像を非積分関数に含む積分公式(1.1.5)により与えられるものと同じである。
渦像の渦度分布は一意には決まらないが、渦像により物体外に誘導される速度場は、表面上で与えられた値をとる非回転なソレノイダル場である。そのため、この分布の構成方法は特定の方法に依存しないことに注意が必要である。渦像の渦度は、物体単独で決定されるものでは無く、$\Phi$ が領域全体の幾何学に依存して決まるゆえに、他の物体にも依存して決まることに注意が必要である。
$\Phi$ の決定にあたっては、以下のように構成される速度場への寄与について、非回転部分を使用することが往々にして便利である。例えば、物体内での $\nabla \Phi_B$ を、
$$
\left\{
\begin{split}
&\, \nabla^2 \Phi_B = 0 \EE
&\, \ff{\del \Phi_B}{\del n} = \ff{\del \Phi}{\del n}\quad \text{on}\,\,S
\end{split}
\right. \qquad(4)
$$
というように、$\Phi_B$ が物体内で解析的であるという要求によって定義できる。こうすると、ポテンシャル \Phi_B$ を一意に定めることができる。ただし、一般に $\Phi$ の物体内への解析的継続は $\Phi_B$ と同じでは無い。普通は、$\nabla \Phi$ と $\nabla \Phi_B$ の接線成分は不連続であり、その表面は強度、
\begin{split}
\B{\kappa} = \B{n}\times (\nabla \Phi-\nabla \Phi_B) \qquad(5)
\end{split}
の渦層あるいは強度 $\nabla \Phi-\nabla \Phi_B$ の等価双極子面分布と等価である。この形式は渦層としての、渦像の表現を与える。
一般に、渦像の渦度を閉形式で記述することは不可能である。ただし、閉形式を用いて書き下すことができる単純な場合がいくつかある。
例えば、$y=0$ の平面に設置した剛体壁と、それに平行な $z$ 方向の直線線渦の組に対応する像系は、直線渦を鏡像の位置に配置した、つまり等しい強さの直線渦を反対の位置に配置した一組の渦系である。これらの像により誘導される速度は、壁に平行な方向では $\DL{\ff{\Gamma}{4\pi h}}$ である。ここに、$\Gamma$ は渦の強度 $h$ は壁からの距離である。
第2章3節の考察にて、渦のコアに外力が作用しない限り、渦はこの速度で壁に平行に移動する。この場合、$\Phi=-\DL{\ff{\Gamma}{4\pi}\q }$ となる。ここに $\q$ は場のある点と渦像を結ぶ線と $x$ 軸の間の角度である。また、$\Phi_B=\DL{ -\ff{\Gamma}{4\pi}\q } $ である。この $\q$ は実際の渦についての角度である。$y=0$ 上の渦層の強度 $\DL{ -\ff{\Gamma h}{\pi(h^2+x^2)^{3/2} } }$ は、代替の渦像系である。これらから、2つの系が $y>0$ で同じ速度を与えることが容易に確認できる。

剛体円筒の外の直線線渦は、円筒表面周りの循環が $0$ のとき、$P’$ の点で大きさの等しい反対向きの鏡像の関係の渦を配置できる。(ミルン・トムソンの円定理)これは、$\DL{ \ff{\sin \angle PAO}{PA}=\ff{\sin \angle P’AO}{P’A} }$ という関係が成立することの事実から理解できるであろう。なお、$P’$ は $OP\cdot OP’=a^2$ を満たす位置の点であるとする。また、$A$ での速度は円筒の接線方向を向いている。また、渦は円筒周りを一定速度で時計回りに運動する。つまり、
\begin{split}
\ff{\Gamma}{2\pi(r-a^2/r)}-\ff{\Gamma}{2\pi r}=\ff{\Gamma a^2}{2\pi r(r^2-a^2)} \qquad(6)
\end{split}
渦は、円筒周りの循環が $0$ であるにもかかわらず、円筒周りを移動することに注意しよう。これは、非定常流の可視化により生じる錯誤の別の例である。
中程度のレイノルズ数では、一様流中の円筒の後ろに2つの、互いに静止した反対方向の渦が生まれる。非粘性流れでのこの流れは、円筒の後ろに対称に静止している2つの等しい反対方向に回転している線渦である。これらの像系は、逆点での2つの等しい反対方向の(束縛)渦から成り、一様流とその像による円筒中心での双極子(あるいは等価な無限小の渦対)がある。
このような定常解の見つけ方は、ある自由渦ともう片方の自由渦の2つの渦、そして一様流により形成される渦度場がある境界で $0$ になるという条件を満たす代数方程式の根を得ることと同義である。この問題は Foppl により調査されている。彼は可能な渦位置の軌跡を示しており、その軌跡は、
\begin{split}
r^2-a^2=2ry \qquad(7)
\end{split}
を満たす曲線となる。ここに $U$ を $x$ 方向に平行な自由一様流、$a$ を円筒の半径として、渦の強度は、
\begin{split}
4\pi Uy\left( 1-\ff{a^4}{r^4} \right) \qquad(8)
\end{split}
となる。
このモデルはいくつかの興味深い特徴を持っていて、例えばこの配置は反対称2次元擾乱に対して不安定であることが知られている。また、円筒に対する抗力は消滅する。この結果は、円筒上の圧力を直接計算すること、あるいは、より簡単に、十分遠方では流れを一様流に重ね合わされた2次元双極子により近似できることを用いても確かめられる。
剛体平面内の曲線線渦の像系は、反転循環を持つ線渦の鏡面反射である。球に対しての像系は Lighthill により計算されているが、かなり複雑である。
まずは、球の中心から距離 $r>a$ の点での循環 $\Gamma$ の線渦要素 $\diff s$ を考える。要素の像は、循環 $\DL{ -\ff{\Gamma a}{r} }$ の逆要素と、循環 $\DL{ \ff{\Gamma \diff s_r}{a} }$ を持つ逆点から球の中心までの半径方向に延びる線渦から成る。ここで、$\diff s_r$ は $\diff r$ の半径成分である。この主張を確認するために、まずはビオ・サバールの法則によると、球外の要素は球面上の点での法線速度、
\begin{split}
\ff{ \Gamma \diff s_t \sin\q \sin\phi }{4\pi(a^2-2ar/cos\q+r^2)^{3/2} }
\end{split}
を生成することに注意せよ。

極座標系 $(a,\q,\phi)$ にて軸は渦を通り、平面 $\phi=0$ の要素を含む。($\diff s_t$ は $\diff s$ の横断成分を表す)$r\to \DL{ \ff{a^2}{r} }$ で、$\diff s_t\to \DL{ \ff{a^2}{r^2}\diff s_t }$、$\Gamma\to \DL{ \ff{r}{a}\Gamma }$ に置き換えてもこの式は変わらないので、渦とその鏡像は表面に大きさが等しく正反対の方向への寄与することから従う。
ここで気を付けなければならないのは、鏡像の作る渦度場がソレノイダル性を持たないことである。このことは、鏡像の渦の端での循環の変化を説明するために、鏡像の点(逆点)から球の中心まで半径に沿って循環 $\DL{ \ff{\Gamma \diff s_r}{a} }$ の線渦を持つことで達成される。なお、この線渦は球面を流線のまま残す。Lighthill は3つの要素により、任意の点で誘導される速度についての、長大な数式を与えているが、現代の慣行とは異なり、渦要素の強度をその循環に長さを掛けたものとして定義していることに注意が必要である。
上の議論から分かるように、球内の線渦の像系は、曲線の逆に沿った可変強度の線渦と、球の中心を逆曲線に結ぶ円錐渦層から成る。
渦層の逆渦との端での強度は $\Gamma\DL{\left( \ff{r^2}{a^3} \right)\text{cot}\xi }$ である。ここで $\xi$ は $r$ での渦への接線と半径方向の成す角度である。線渦が固定された球と同心の球面内にある場合、渦層は存在しない。この場合は、軸が球の中心を通る円形線渦の場合に相当する。
この状態は、Lamb による像系の仕事を再配置することで容易に導ける。このとき、双極子の像は逆点に配置された反対符号のもので、強度を $\DL{ \ff{a^3}{r^3} }$ 倍したものとなる。ただし、双極子の密度は逆曲線により境界された表面の面積の減少により $\DL{ \ff{R}{a} }$ 倍増加するため、正味の渦像の強度は $\DL{ \ff{r}{a} }$ 倍となる。
球内の線渦に対する像は、同様の方法で得られて、逆曲線上の円渦と無限遠まで伸びる円錐形の渦層から成る。ついては、Dhanak は渦フィラメントと剛体球との相互作用を計算している。
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