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3.7 孤立渦のインパルス(Impulse of isolated vortices)

 これまでの議論にて、流体が無境界の場合は、全流れのインパルスの不変であることが示された。今度は、孤立渦、すなわち他の渦または、等価的な物体の運動によって生成される外部速度場中の非回転流体に囲まれた、有限範囲の閉じた渦度分布を考えることにする。今、$V_V$ を渦の占める体積、$S_V$ をその表面とする。このとき、仮定により:

$$
\begin{split}
\B{\om}\cdot \B{n} = 0 \quad \text{on}\,\, S_V \qquad(1)
\end{split}
$$

とできて、したがって、

$$
\begin{split}
\int \B{\om}\,\diff V_V = -\int \B{x}(\B{\om}\cdot \B{n})\,\diff S_V = 0 \qquad(2)
\end{split}
$$

 非保存力が作用している場合、渦度によって占められている体積は、物質的でない可能性がある。この場合、$V_V$ は非保存力が作用する有限領域を含む領域であると理解される。それゆえ、

$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t} \int \B{\om}\,\diff V_V = \int \ff{ D\B{\om}}{D t}\,\diff V_V = \int (\B{\om}\cdot \B{n})\B{u} \,\diff S_V + \int \B{n}\times \B{F}\diff S_V \qquad(3)
\end{split}
$$

となる。これの整合性のためには $\B{F}$ が境界表面で消失するか、あるいは垂直であることが十分である。

$$
\begin{split}
\B{n}\times \B{F}=\B{0} \quad \text{on}\,\, S_V \qquad(4)
\end{split}
$$

※ $\B{n}\times \B{F}$ が不連続となる表面は、渦層となる。詳しくは第2章2節を参照。

 さらに、渦のインパルス $\B{I}_V$ と角運動量インパルス $\B{A}_V$ を、無境界流れに使用できる表現を以下に定義する。

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \B{I}_V = \ff{1}{2}\int \B{x}\times \B{\om}\,\diff V_V \qquad(5) \EE
&\, \B{A}_V = -\ff{1}{2}\int \B{x}^2 \B{\om}\,\diff V_V \qquad(6) \EE
\end{split}
\right.
$$

 渦内の速度は $\B{u} = \B{u}_V + \B{u}_e$ となる。ここで、$\B{u}_V$ は(1.1.5)による $V_V$ 上の積分で与えられ、$\B{u}_e (= \nabla \phi)$ は他の渦や、物体の運動によるものである。外部速度 $\B{u}_e$ には、渦によって生成される像渦度による速度も含まれる。

 $\B{I}_V$ と $\B{A}_V$ を再び、$V_V$ 内で渦度を、瞬間的に生成するために必要な衝撃力 $\B{f}$ のインパルスとインパルスのモーメントの観点から解釈できる。衝撃力と速度・渦度場の関係は(3.4)と(3.6)で与えられる。$\B{a} = \B{f}$ として、恒等式(2.11)から、次がすぐに得られる。

$$
\begin{split}
\B{I}_V = \int \B{f}\,\diff V_V \qquad(7)
\end{split}
$$

 ただし、境界 $S_V$ 上の衝撃力に対して(4)が成立する場合。同じ条件下で、(5.1)から:

$$
\begin{split}
\B{A}_V = \int \B{x}\times \B{f}\,\diff V_V \qquad(8)
\end{split}
$$

とできる。

 ここで、衝撃圧力 $P$ について言及しておく。衝撃力が与えられた場合、$P$ はポアソン方程式(3.5)によって決定される。しかしながら、境界が存在する場合には、境界条件を与える必要がある。適切な条件は、$P$ の法線微分に関するノイマン条件であり、これは式(3.4)の法線成分が境界上で満たされるという要件によって与えられる。すなわち、

$$
\begin{split}
\ff{\del P}{\del n} = (\B{f}\cdot \B{n}-\B{U}\cdot \B{n}) \qquad(9)
\end{split}
$$

 ここに、$\B{U}$ は境界の速度であり、$\B{u}\cdot \B{n}=\B{U}\cdot \B{n}$ が満たされる必要がある。速度場の接線方向成分は一般に境界の接線方向速度と等しくないため、渦層は通常、壁面に生成される。

 非保存力が作用している場合、渦度によって占められる体積は物質的でない可能性がある。 この場合、$V_V$ は非保存力が作用する、ある有限領域を含んだ物質的体積であると理解される。孤立渦のインパルスは、一般的に外部速度の存在下では不変とはならない。具体的には次のようになる。

 ある孤立した渦の衝撃力は、一般に外部速度の存在下では不変ではない。つまり、

$$
\begin{split}
\ff{\diff \B{I}_V}{\diff t} &= \ff{1}{2}\int \left( \B{x}\times \ff{D \B{\om}}{D t}+\B{u}\times \B{\om} \right)\diff V_V \EE
&= \int \Big( \B{F}+\ff{1}{2}\B{x}\times(\B{\om}\cdot\nabla)\B{u}+\ff{1}{2}\B{u}\times\B{\om} \Big)\diff V_V \qquad(10)
\end{split}
$$

 ここで、$\B{F}$ からの寄与については式(4)と恒等式(2.11)を用いた。さて、

$$
\begin{split}
\int \B{x}\times (\B{\om}\cdot \nabla)\B{u}\,\diff V_V = \int \B{u}\times \B{\om}\diff V_V-\int (\B{u}\times \B{x})\B{\om}\cdot \B{n}\,\diff S_V \qquad(11)
\end{split}
$$

のため、以下が導ける。

$$
\begin{split}
\ff{\diff \B{I}_V}{\diff t} = \int \B{F}\,\diff V_V+\int \B{u}\times \B{\om}\,\diff V_V-\ff{1}{2}\int (\B{u}\times \B{\om})\B{\om}\cdot\B{n}\,\diff S_V \qquad(12)
\end{split}
$$

 (1.3)から、$S_V$ 内で $\B{\om} = \rot \B{u}_V$ であり、$\B{u}_V$ の(1.3)中の面積分は、無限遠の表面上ででも計算でき、ここでは消滅することから:

$$
\begin{split}
\int \B{u}_V\times \B{\om}\,\diff V_V = \B{0} \qquad(13)
\end{split}
$$

であると言える。式(13)は、渦がそれ自身に及ぼす全渦力(像の効果を除く)がゼロであることを言っている。したがって、(12)と(1)を組み合わせて:

$$
\begin{split}
\ff{\diff \B{I}_V}{\diff t} = \int \B{F}\,\diff V_V+\int \B{u}_e\times \B{\om}\,\diff V_V \qquad(14)
\end{split}
$$

 式(14)の第二積分は、外部速度による渦力として解釈できる。渦が剛体壁を持つ容器に閉じ込められ、外部力により定常に保たれていると仮定すると、ニュートンの第三法則から、定常運動にて流体が壁に及ぼす力と外力は等しくなる。したがって、渦が剛体容器内で自由に移動できる場合、インパルスの変化率は、瞬間的に等価な定常運動で容器の壁が流体に及ぼす力となる。これは恒等式(1.3)からも従い、(12)を用いることで:

$$
\begin{split}
\int \B{u} \times \B{\om}\,\diff V_V = \int \B{u}_e\times \B{\om}\,\diff V_V = \int_S\left( \ff{1}{2} \B{u}^2\B{n}-\B{u}(\B{u}\cdot \B{n}) \right)\diff S_V \qquad(15)
\end{split}
$$

が得られる。

 さらに、ベルヌーイの方程式(1.9.3)と、$H$ が一定で $\B{u}\cdot \B{n} = 0$ が壁上であるという観察との組み合わせを考えることができる。もちろん、容器は仮想の存在でも構わない。このときは、渦を含む任意の流線面が可能な封じ込め表面に相当する。この原理の簡単な応用として、Betz [1932]によって述べられたように、平面壁に境界された渦に対して、壁に平行なインパルス成分は一定のままであることが述べられる。同様に、

$$
\begin{split}
\ff{\diff \B{A}_V}{\diff t} &= -\ff{1}{2}\int \left( r^2\ff{D \B{\om}}{D t}+2(\B{u}\cdot \B{x})\B{\om} \right)\diff V_V \EE
&= \int \B{x}\times \B{F}\diff V_V-\int \left( \ff{1}{2}r^2(\B{\om}\cdot \nabla)\B{u}+(\B{u}\cdot \B{x})\B{\om} \right)\diff V_V \qquad(16)
\end{split}
$$

であることも言える。($\B{A}_V$ は角運動量インパルス)ここに、$\B{F}$ からの寄与に(5.1)と(4)を用いると、

$$
\begin{split}
\int \left( \ff{1}{2}r^2(\B{\om}\cdot \nabla)\B{u}+(\B{\om}\cdot \B{x})\B{u} \right)\diff V_V = -\int \ff{1}{2}r^2(\B{\om}\cdot \B{n})\B{u}\,\diff S_V = 0 \qquad(17)
\end{split}
$$

したがって、式(16)の右辺の第二項は:

$$
\begin{split}
\int \B{x}\times (\B{u}\times \B{\om} )\diff V_V = \int \left( \ff{1}{2}(\B{n}\times \B{x})\B{u}^2+(\B{x}\times \B{u})\B{u}\cdot \B{n} \right)\diff S_V \qquad(18)
\end{split}
$$

$\B{u} = \B{u}_V$ のとき、表面を無限遠まで拡張すると、右辺が消失する。したがって、

$$
\begin{split}
\ff{\diff \B{A}_V}{\diff t} &= \int \B{x}\times \B{F}\diff V_V+\int \B{x}\times (\B{u}_e\times \B{\om}) \diff V_V \qquad(19)
\end{split}
$$

となる。

 今、右辺は外力のモーメントと、外部速度による渦力のモーメントとして解釈できる。後者は、瞬間的に等価な定常運動で(仮想的な)封じ込め容器によって適用される組と等価である。

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