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1.5 渦運動の法則(The laws of vortex motion)

 ヘルムホルツ [1858] によって渦運動に関する3つの法則が与えられた。これは、保存力の作用下での理想流体の運動に対するもので、次の様に述べられる:

I. 最初に渦度を持たない流体粒子は渦度を持たないまま留まる。

II. ある瞬間に渦線上にある流体粒子は、すべての後続時刻で渦線上にある。別の言い方をすれば、渦線と渦管は流体とともに移動する。

III. 渦管の強さは流体の運動中に時間変化しない。

 第1の法則は、ラグランジュの渦定理を含意する。また、別の定式化も可能である。これらの法則を証明する方法はいくつかあるが、ここでは外力 $\B{F}$(単位質量当たりに作用する力)の存在下で運動する理想流体についての、質量保存則である連続方程式、運動量保存則に関するオイラーの運動方程式から始めることにする。

$$
\left\{
\begin{split}
&\,\ff{\del \rho}{\del t}+(\B{u}\cdot\nabla) \rho +\rho\,\text{div}\B{u} = 0 \quad\qquad(1)\EE
&\,\ff{\del \B{u}}{\del t} + (\B{u}\cdot\nabla)\B{u} = -\ff{1}{\rho}\nabla p + \B{F} \qquad(2)
\end{split}
\right.
$$

 今、式(2)のローテーションを考えよう、

$$
\begin{split}
\nabla\times\ff{\del \B{u}}{\del t} + \nabla\times(\B{u}\cdot\nabla)\B{u} &= -\nabla\times\ff{1}{\rho}\nabla p + \nabla\times\B{F} \EE
\end{split}
$$

これを計算するにあたり、式(1.9)と次の公式を用いる。

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \text{rot}(\B{a}\times\B{b})=\B{a}\,\text{div}\,\B{b}-\B{b}\,\text{div}\,\B{a}-(\B{a}\cdot \nabla)\B{b}+(\B{b}\cdot \nabla)\B{a} \qquad(1.9)\EE
&\, (\B{u}\cdot\nabla)\B{u}=\nabla\left( \ff{1}{2}\B{u}^2 \right)-\B{u}\times(\nabla\times\B{u})\qquad(3)
\end{split}
\right.
$$

なお、計算の過程で $\nabla\times\B{u}=\B{\omega},\,\,\,\text{rot}\,\text{grad}\,g=0, \,\text{div}\B{\omega}=0$ も用いている。今、

$$
\begin{split}
\nabla\times(\B{u}\cdot\nabla)\B{u} &= \nabla\times \left( \ff{1}{2}\nabla \B{u}^2-\B{u}\times \B{\omega} \right) \EE
&= 0-\Big( \B{u}\,\text{div}\,\B{\omega}-\B{\omega}\,\text{div}\,\B{u}-(\B{u}\cdot \nabla)\B{\omega}+(\B{\omega}\cdot \nabla)\B{u} \Big) \EE
&= \B{\omega}\,\text{div}\,\B{u}+(\B{u}\cdot \nabla)\B{\omega}-(\B{\omega}\cdot \nabla)\B{u}
\end{split}
$$

また、ローテーションの性質から

$$
\begin{split}
-\nabla\times\ff{1}{\rho}\nabla p &= \nabla\left(\ff{1}{\rho} \right)\times \nabla p+\ff{1}{\rho}\nabla\times \nabla p \EE
&= \ff{1}{\rho^2}\nabla \rho \times \nabla p+0
\end{split}
$$

と言える。これらの結果を対象の式に戻すと、

$$
\begin{split}
\ff{\del \B{\omega}}{\del t} + \Big( \B{\omega}\,\text{div}\,\B{u}+(\B{u}\cdot \nabla)\B{\omega}-(\B{\omega}\cdot \nabla)\B{u}\Big) &= \ff{1}{\rho^2}\nabla \rho \times \nabla p + \nabla\times\B{F} \EE
\ff{\del \B{\omega}}{\del t} + (\B{u}\cdot \nabla)\B{\omega} &=(\B{\omega}\cdot \nabla)\B{u}-\B{\omega}\,\text{div}\B{u}+\ff{1}{\rho^2}\nabla \rho \times \nabla p + \nabla\times\B{F}\qquad(4)
\end{split}
$$

が得られる。これは、Kochin, Kibel and Roze [1964] によって導かれたもので、フリードマン方程式と呼ばれている。さて、バロトロピー流体においては、等密度面(等比重面)は等圧面(等圧線)と平行であり、それゆえ、$\nabla \rho \times \nabla p=\B{0}$ となる。さらに、外力が保存力の場合 $\nabla\times \B{F}=\B{0}$ のため、次の様に簡単になり、結果とした有名なヘルムホルツ方程式が得られる。

$$
\begin{split}
\ff{\del \B{\omega}}{\del t} + (\B{u}\cdot \nabla)\B{\omega} &=(\B{\omega}\cdot \nabla)\B{u}-\B{\omega}\,\text{div}\B{u}\qquad(5)
\end{split}
$$

 ヘルムホルツ方程式から得られるの注目すべき情報は、渦度の時間変化には圧力が無関係であること、渦度の変化率が速度・渦度場の瞬間局所値のみに依存することである。(一様密度流体の圧力場は、境界条件が完全に確定しないが、おそらくノイマン境界条件を持つポアソン方程式 $\DL{-\rho \ff{\del^2 u_iu_j}{\del x_i \del x_j}}$ により与えられる)

  次に、連続方程式を考慮して式(5)の $\text{div}\B{u}$ を具体化しつつ、物質微分の定義を用いるなどの巧妙な変形を行う、すると、

$$
\begin{split}
\ff{\del \B{\omega}}{\del t} + (\B{u}\cdot \nabla)\B{\omega} &=(\B{\omega}\cdot \nabla)\B{u}-\ff{\B{\omega}}{\rho}\left( -\ff{\del \rho}{\del t}-(\B{u}\cdot\nabla) \rho \right)\EE
\ff{D \B{\omega}}{D t} &=(\B{\omega}\cdot \nabla)\B{u}+\ff{\B{\omega}}{\rho}\ff{D \rho}{D t} \EE
\ff{1}{\rho}\ff{D \B{\omega}}{D t}-\ff{\B{\omega}}{\rho^2}\ff{D \rho}{D t} &=\left( \ff{\B{\omega}}{\rho}\cdot \nabla \right)\B{u} \EE
\ff{D}{D t}\left( \ff{\B{\omega}}{\rho} \right) &= \left( \ff{\B{\omega}}{\rho}\cdot \nabla \right)\B{u} \qquad(6)
\end{split}
$$

が得られる。

 これは流体粒子の持っている $\DL{\ff{\B{\omega}}{\rho}}$ の時間変化率は、その瞬間値と局所的な速度勾配で表現できることを主張している。また、流体粒子・物質線の概念と、それらが流体とともに移動するという理解は、次のように精密化できる。すなわち、流体粒子または物質点は軌道(流脈線) $\B{X}(t)$ 上で次式を満たす:

$$
\begin{split}
\ff{D \B{X}}{D t} = \B{u}(\B{X}, t),\qquad \B{X}(0)=\B{x}_0\qquad(7)
\end{split}
$$

 流脈線または軌道 $\B{X}(t)$ の集合に含まれる流体運動についての、上の記述はラグランジュ表現と呼ばれる。例えば時刻 $t$、位置 $\B{X}(t)$ での流体粒子の速度は $\DL{\ff{D \B{X}}{D t}}$ と表現できる。オイラー表現のように現在位置 $\B{X}(t)$ に関してではなく、時刻 $t$ と初期位置 $\B{x}_0$ の関数として記述されるのが特徴である。

 「物質線」は定数 $t$ と変数 $\B{\sigma}$ を用いて $\B{X}(t,\B{\sigma})$ で記述される。なお、$\B{\sigma}$ は物質線の初期位置 $\B{X}(t_0,\B{\sigma})$ で指定されるラグランジュ粒子であるとする。

 さて、流脈線は固定点 $\B{x}_0$ からある時間中 $0 < \tau <t$ に放出された粒子の軌跡であり、流脈線は以下の微分方程式を積分することで得られる。

$$
\begin{split}
\ff{D \B{X}}{D t}(t,\tau)=\B{u}(\B{X},t),\quad \B{X}(\tau,\tau)=\B{x}_0\qquad(8)
\end{split}
$$

 さて、定常流においては、流線と流脈線は一致する。そして、流線(瞬間速度に接線の曲線)でもあることに注意を払おう。ここで、$\q (\B{x},t)$ を場の変数として、物質線上の値を $\q(\B{X}(t,\B{\sigma),t}) = \q_{\sigma(t)}\,\, (9)$ で表すとする。

 このとき、流体と共に移動する $\q$ の時間微分は次の様になる。

$$
\begin{split}
\ff{D \q}{D t}= \ff{\diff \q_{\sigma}}{\diff t} = \ff{\del \q}{\del t} + (\B{u}\cdot\nabla)\q \qquad(10)
\end{split}
$$

これを式(7)に対して適用すると式(6)を

$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}\left( \ff{\B{\omega}}{\rho} \right)_{\sigma} &= \left( \ff{\B{\omega}}{\rho}\cdot \nabla \right)\B{u} \qquad(11)
\end{split}
$$

と表現きることが言える。

 さて、方程式(11)は $\DL{\ff{\B{\omega}}{\rho}}$ に対する常微分方程式であり、$\nabla \B{u}$ が連続なら標準的な理論から、ある時間区間で一意解を持つことが言える。なお、式(1.5)から $\B{u}$ の連続性は $\nabla \B{u}$ の連続性を含意することが言える。すると初期に、$\DL{\ff{\B{\omega}}{\rho}}=\B{0} $ なら解が存在する限り $\DL{\ff{\B{\omega}}{\rho}}=\B{0}$ が全時間で成り立つことが言える。これがヘルムホルツ法則の第1法則である。

 次に、物質線の線要素 $\delta \B{s}_{\sigma}$ を考える。これは時間を含まない変数 $\eps$ に対して $\DL{\delta \B{s}_{\sigma}=\eps\ff{\del \B{X}}{\del \sigma} }$ として定義できる。すなわち、

$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}\delta \B{s}_{\sigma}=\eps \ff{\del}{\del \sigma}\left( \ff{\diff \B{X}}{\diff t} \right)=\eps \ff{\del}{\del \sigma} \ff{\del}{\del \sigma}\B{u}(\B{X},t)=\delta \B{s}_{\sigma}\cdot \nabla \B{u} \qquad(12)
\end{split}
$$

したがって物質線上では式(11)と(12)から以下が言える。

$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}\left( \delta \B{s}_{\sigma}-\eps\ff{\B{\omega}}{\rho} \right)=\left( \delta \B{s}_{\sigma}-\eps\ff{\B{\omega}}{\rho} \right)\cdot \nabla \B{u} \qquad(13)
\end{split}
$$

 最初の時刻 $t_0$ で物質線が渦線と一致していたとする、すなわち $t=t_0$ にてある $\eps(\B{\sigma})$ に対して $\delta \B{s}_{\sigma} = \eps\DL{\left( \ff{\B{\omega}}{\rho} \right)_{\sigma}}$ である。また、常微分方程式の解についての理論から、$\nabla \B{u}$ が連続である限り、式(13)は一意の解持ち、それは、

$$
\begin{split}
\delta \B{s}_{\sigma} = \eps\DL{\left( \ff{\B{\omega}}{\rho} \right)_{\sigma}} \qquad(14)
\end{split}
$$

である。このことは、物質線は渦線のままであり、この意味で渦線は流体とともに移動するということが分かる。これはヘルムホルツ法則の第2法則を意味する。

 ところで、式(11)は(2.2)にて定義する歪み速度テンソル $e_{ij}$ を用いて次のようにも書ける:

$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}\left( \ff{\omega_i}{\rho} \right)_{\sigma} &= e_{ij}\ff{\omega_j}{\rho} \qquad(15)
\end{split}
$$

(このようになるのは、$\omega_j \Omega_{ij}=0$ となるからという事情もある)

 上式は、流体粒子の渦度の変化率は、局所歪み速度テンソルに比例し、局所渦度や回転テンソルには依存しないことを示す。ただし、§2で議論するように、これは渦度ベクトルが回転しないことを必ずしも意味しない。$e_{ij}$ による流体粒子の変形の一部分は渦線を伸長し、また一部は渦線を回転させる作用を及ぼす。

 ヘルムホルツの第3法則は断面が $\delta A_0$ で表される無限小渦菅を考えることで得られる。渦菅は流体と共に移動するゆえに、質量保尊測の微分表現、

$$
\begin{split}
\rho_{\sigma}\delta\B{s}_{\sigma}\delta A_{\sigma}=\text{const.} \qquad(16)
\end{split}
$$

から得られる。式(14)を用いて $\delta\B{s}_{\sigma}$ を置換すると、

$$
\begin{split}
\omega_{\sigma}\,\delta A_{\sigma}=\text{const.} \qquad(17)
\end{split}
$$

となる。これは無限小管の強さが一定であることを意味して、この結果を拡張すると任意サイズの管についても同様であることが言える(無限小管の組み合わせであるから)。

 非圧縮流体では $\DL{\delta A_{\sigma} = \ff{1}{\delta\B{s}_{\sigma}} }$ であるため、式(17)は渦度が渦線の長さに比例することを含意する。また、渦線を伸長する流れは渦度を増加させることも言える。

 さて、平面2次元流について旋回のない、軸対称流の特別な場合について考えよう。最初のケースでは、$w=0$ で $\DL{\ff{\del }{\del z}=0 }$ である。また、流線と流跡線は $z$ 軸に垂直な平面内にあるとする。すると、

$$
\begin{split}
\B{\omega} = \left(0,0, \ff{\del v}{\del x}-\ff{\del w}{\del y} \right) = (0,0,\omega) \qquad(18)
\end{split}
$$

と渦度を表せて、渦度は非ゼロ成分を一つだけ持つようになる。このように、渦度は流れが変化する面に対して垂直であるため、$(\B{\omega}\cdot \nabla)\B{u}=0$(つまり、渦線は伸長されない)で、ヘルムホルツ方程式のラグランジュ表現、式(6)は、

$$
\begin{split}
\ff{D}{D t}\left( \ff{\B{\omega}}{\rho} \right) &= 0 \qquad(19)
\end{split}
$$

となる。つまり、$\DL{\ff{\B{\omega}}{\rho}}$ は流体粒子に保存されたままとなる。特に、非圧縮性流体のとき $\DL{\ff{\diff \rho}{\diff t}=0}$ のため、

$$
\begin{split}
\ff{D \B{\omega}}{D t} &= \ff{\del \B{\omega}}{\del t}+(\B{u}\cdot\nabla)\B{\omega}=\B{0} \qquad(20)
\end{split}
$$

と言えて、渦度は保存される。

 旋回のない軸対称流の場合、流線は軸を通る子午面内にあり、渦度は方位方向となる。円筒座標 $(r,\q,z)$ を選択すると、$\B{\omega}=\omega_{\q} \B{e}_{\q},$ $\B{u}=u_r\B{e}_r+u_z\B{e}_z$ の形で表せ、式(11)は次の形をとる:

$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}\left( \ff{\omega_{\q}}{\rho} \right) &= \ff{\omega_{\q} u_r}{\rho r} \qquad(21)
\end{split}
$$

このようになる理由は、$\DL{\B{\omega}\cdot\nabla=\left(\ff{\omega_{\q}}{r}\right) \ff{\del}{\del \q}},$ $\DL{ \ff{\del \B{u}}{\del \q}=u_r \B{e}_{\q},}$ のためである。さらに、$\DL{\ff{\diff r}{\diff t}=u_r}$ であることを利用すれば、以下のように書ける。

$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}\left( \ff{\omega_{\q}}{\rho r} \right) &= 0 \qquad(22)
\end{split}
$$

 密度が一定の場合、この方程式は渦度が渦線の長さに比例するという結果を述べている。軸対称流では渦線長は軸からの距離 $r$ に比例することが分かる。

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