ヘルムホルツの諸法則は、保存力の作用下での理想流体における循環の保存を通しても確認できる。流体内の閉曲線 $C(t)$ 周りの循環 $\Gamma(t)$ について考えよう。このとき曲線は縮約可能である必要は必ずしもない。この循環は次のようになる。
$$
\begin{split}
\Gamma(t)=\oint_{C(t)}\B{u}\cdot\diff \B{s}=\oint \B{u}_{\sigma}\cdot\ff{\del \B{s}_{\sigma}}{\del \sigma}\diff \sigma \qquad(1)
\end{split}
$$
最右辺の積分は $\sigma$ の固定された(周期的な)の値の間を取る。曲線が流体とともに移動するときの循環の、変化率を計算してみよう。次を得る:
$$
\begin{split}
\ff{\diff\Gamma}{\diff t}=\oint \ff{\diff\B{u}_{\sigma}}{\diff t}\cdot\ff{\del \B{s}_{\sigma}}{\del \sigma}\diff \sigma+\oint \B{u}_{\sigma}\cdot\ff{\diff}{\diff t} \left(\ff{\del \B{s}_{\sigma}}{\del \sigma}\right)\diff \sigma\qquad(2)
\end{split}
$$
今、$\DL{ \ff{\diff\B{u}_{\sigma}}{\diff t}=\ff{\del \B{u}}{\del t}+(\B{u}\cdot\nabla)\B{u} }$ は式(5.2) により与えられ、$\DL{ \ff{\diff}{\diff t}\left\{ \left( \ff{\del \B{s}_{\sigma}}{\del \sigma} \right) \diff \sigma\right\} }=\diff \left( \ff{\del \B{s}_{\sigma}}{\diff t} \right)$ (5.12)により与えられていた。これらを代入すると、
$$
\begin{split}
\ff{\diff\Gamma}{\diff t}&=\oint \left( -\ff{1}{\rho}\nabla p+\B{F} \right)\cdot \diff \B{s}+\oint \Big(\B{u}\cdot (\diff \B{s}\cdot \nabla)\B{u} \Big) \EE
&= \oint \left( -\ff{1}{\rho}\ff{\del p}{\del \sigma}+\ff{1}{2}\ff{\del }{\del \sigma}\B{u}^2 \right)\diff\sigma+\oint \B{F}\cdot\diff{\B{s}} \qquad(3) \EE
&= 0
\end{split}
$$
バロトロピー流体を考えているため、式(3)の最初の積分からの寄与は消失する。$p$ と $\B{u}$ は単価関数でなければならないからである。$\B{F}$ が保存力の場合、つまり単価ポテンシャル $V$ の勾配で表される場合、
$$
\begin{split}
\oint\B{F}\cdot\,\diff \B{s}=\oint -\ff{\del V}{\del \sigma}\diff \sigma=0
\end{split}
$$
これらの条件下で、理想流体における閉曲線周りの循環は、不変量であるというケルビンの循環定理が得られた。ただし、速度場 $\B{u}$ が連続で、閉曲線 $C(t)$ が滑らかであることが仮定されることに注意。両条件とも現実の流れでは破られ、循環の創出につながることがあることに注意(§6.5参照)。
ヘルムホルツの諸法則を得るため、閉曲線が縮約可能の場合、ストークスの定理からこの閉曲線を通過する渦度の流束が一定であることが従うことを利用する。ある時刻 $t_0$ で渦管を境界づける物質面を考えよう。この渦管周りの任意の閉曲線周りの循環は初期は零である。そして、循環定理により任意の時刻で常に零であることが言える。したがって面上の法線は常に渦度に垂直で、物質面は運動中渦管のままであることが言える。さらに、渦管周りの閉曲線の循環は常に一定であるため、渦管の強さが一定であることが言える。また、渦線は渦管を構成する要素である、すなわち渦管は物質面であるため、渦線は物質線であることも言える。
このように、単連結領域の流体にて、渦度が初期にて零の場合、任意の物質面を通る渦度の流束も初期にて零であるため、その後も渦度は零のままとなる。一方、流体が占める領域が単連結でない、すなわち一点まで連続的に収縮できない閉曲線が存在する場合、式(3)は物体力 $\B{F}$ が多価ポテンシャルの勾配となる場合には、循環が創出される可能性を示している。
これは例えば、電磁力によって運動させられる電気伝導流体で起こりうる。しかし、2つの調和可能な回路(流体外に出ることなく互いに連続変形可能)周りの循環は同じであろう。なぜなら、2つの循環の差は、縮約可能な閉曲線周りの $\B{F}$ の線積分として表現できるからである。
ケルビンの循環定理の系として、有限領域において渦度が初期に零である非圧縮ナビエ・ストークス方程式の初期値問題として生み出される渦度分布は、渦度が至る所、零でない限り時刻 $t$ の解析関数とはなり得ないことは注目に値する。
$\B{\omega} = \B{0}$ なら、$\text{div}\,\B{u}=0$ にて $\nabla^2 \B{u}=-\text{rot} \B{\omega}=\B{0}$ である。したがって、この領域内にある閉曲線に対して、$\DL{\ff{\diff \Gamma}{\diff t}}$ への粘性寄与は零であり、初期瞬間での高次時間微分も消失する。
解析性は少なくとも有限時間での $\Gamma$ ひいては $\B{\omega}$ の消失を含意するため、渦度は解析的ではありえない。具体例として、柔軟な円筒壁が速度 $2U\sin \q$(明らかな記法)で動く場合、速度 $U$ の流れ中の円筒を過ぎる運動は、ナビエ・ストークス方程式の解について、渦度が零のままの例が提供される。
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