MENU

5.2 渦や物体の壁への引力(Attraction of vortices or bodies to walls)

 物体や渦が $\B{u}\cdot \B{n} = 0$ を満たす固定表面に近づく軌道を持つ場合、(4.1.8)より、渦のインパルスまたは物体の全運動量(実際のものと見かけのものの合計)が、表面に向かう方向の成分を獲得することが言える。

 $\B{I}_v$ が一般に $\B{U}$(渦の速度)と同じ向きの場合、渦や物体はもう一つの物体に引きつけられるように見える。 $\B{I}_v$ と $\B{U}$ が逆向きの場合は、見かけ上の斥力が生じる。両方の場合が実現可能であるが、普通は前者の方がみられる。ケルビン[1868]によれば、この引力は12インチの地球儀を細いひもで吊るし、そのそばに煙の輪を投射することで容易に観察できたという。

 仮想質量テンソルは依然として存在し、(1.4)で与えられるが、ポテンシャル $\Phi^j$ と $\chi_{\A}$ は固体壁の存在によって影響を受け、したがって仮想質量テンソルの係数は物体の位置の関数となる。例えば、平面壁に直角に向かって運動する固体球を考える。速度ポテンシャルを $\DL{ \ff{a}{X} }$($a$:球の半径、$X$:壁からの距離)のべき級数で展開することにより、壁に向かう方向を正にとった仮想運動量は次のように示される(ラム[1932 §98]参照):

$$
\begin{split}
\dot{\B{I}}_B = \ff{2}{3}\pi a^3\left( 1+\ff{a^3}{4X^3} \right) \B{U}
\end{split} \quad(1)
$$

ここに、$\B{U} = \dot{\B{X}}$ である。

 一方、圧力の計算または エネルギー保存則(ラム[1932 §137])により、同じ近似の次数まで、次のことが示される:

$$
\begin{split}
\left( m+\ff{2}{3}\pi a^3 \right)\dot{ \B{U} } = -\ff{3\pi a^6 \B{U}^2}{8\B{X}^4}+\B{F}
\end{split} \quad(2)
$$

 ここで $m$ は球の質量、$\B{F}$ は壁に向かう外力である。したがって、$\B{F} = \B{0}$ の時、球は壁から反発するように見える。しかし、(4.1.6)との矛盾はない。なぜなら、$\B{U}$ の減少による $\B{I}_B$ の減少は、$\B{X}$ の減少による増加( ${|\B{U}| > 0$ の時)によって十分補償されるからである。実際、この近似の次数まで考慮すると、

$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}(m\B{U}+\B{I}_B) = \ff{\pi a^6 \B{U}^2}{8\B{X}^4}
\end{split} \quad(3)
$$

 右辺は壁上の積分からの(4.1.8)への寄与である。

 速度の増加がインパルスまたは仮想運動量の減少を意味するという事実は、渦環の場合にはより顕著である。(3.8.1)から、薄いコア渦環のインパルスは約 $\pi \Gamma R^2$ となる。ここに、$\Gamma$ は循環、$R$ は環の半径である。速度は(10.2.1)で与えられる。環が壁に近づくと、その像の速度場での対流により半径が変化し、明らかに環が膨張する原因となり、そして $\Gamma$ を一定に保つ代わりに、速度の減少をもたらすが、(3.7.14)に従ってインパルスの増加もたらす。

 ケルビン[1881]が述べたように、平面表面上の圧力の積分は零であり、したがって平面上に作用する力は零であることは興味深い。この結果は、半径 $R_{\infty}$ の半球内の実運動量の考察から直ちに従う。運動は非定常であり、大きな距離では速度は等しく反対の渦環の対(’環双極子’)のものであり、$O(r^{-4})$ のオーダーである。速度ポテンシャル、したがって圧力も $O(r^{-3})$ のオーダーである。

 したがって、無限遠の半球を横切る運動量の流束はない。半球内の運動量は一定である。なぜなら、流体の質量中心が固定されているからである。外力は加えられていない。したがって、平面壁上の圧力変動の積分は零となる。この議論は壁が平面で無限であることに依存し、無限遠での速度が $O(r^{-4})$ のオーダーであることを保証する。壁が円柱に置き換えられた場合、この結果は成り立たない。2次元では、計算を明示的に実行できる。また、循環が等しく、反対の直線渦の対が壁に接近する場合について、その結果を直接実証できる。

 この結果は当然、ケルビンの[1867]渦原子理論に対して深刻な痛手を与えた。渦原子は、運動論の原子や分子のような衝突によって壁に運動量を伝達することができないからである。ケルビン[1881]は、壁が有限管の端にあり、渦が管壁に沿って戻ることができる場合には、この結果が成り立たないと主張したが、この声明は誤りであるように思われる。壁が半径 $b$ の半無限円管の端にあると仮定する。無限遠では、ポテンシャル理論の結果として $\phi = O(e^{-kx})$ のオーダーであり、ここで $k$ は $J_0 (kb) = 0$ の最小根とある。したがって、無限遠への運動量流束はなく、端壁の圧力は常に零となるのである。

 サフマン[1979]により、剛体壁に垂直に入射する有限サイズの2次元渦の対称対は、反跳なしで単調に接近することが示された。壁を $y = 0$ とし、渦が $x = 0$ に対して対称で上方から接近するとする。このとき、第一象限の全渦度 $\Gamma$ は、

$$
\begin{split}
\Gamma = \int_0^{\infty} \int_0^{\infty} \om\,\diff x\diff y
\end{split} \quad(4)
$$

となるが、これは粘性がない場合に保存される。象限内の渦度重心の座標 $(\bar{x}, \bar{y})$ は、流体力学的インパルスの成分 $(I_x, I_y)$ と関係する:

$$
\left\{
\begin{split}
&\, I_x = \int_0^{\infty} \int_0^{\infty} y\,\om\,\diff x\diff y \EE
&\, I_y = -\int_0^{\infty} \int_0^{\infty}x\,\om\,\diff x\diff y
\end{split}
\right. \quad(5)
$$

関係式により、

$$
\left\{
\begin{split}
&\, \bar{x} = -\ff{I_y}{\Gamma} \EE
&\, \bar{y} = \ff{I_x}{\Gamma}
\end{split}
\right. \quad(6)
$$

さらに、オイラー方程式から次が成り立つ:

$$
\begin{split}
\ff{\diff I_x}{\diff t} = -\int_0^{\infty}\int_0^{\infty} \left\{ \ff{\del }{\del x}(u\om y)+\ff{\del }{\del y}(v\om y)-v\om \right\}\diff x\diff y
\end{split}
\quad(7)
$$

ここに $(u, v)$ は速度の $x, y$ 成分である。上の部分積分を行い、境界条件

$$
\left\{
\begin{split}
&\, u = 0 \quad \text{on}\,\, x=0 \EE
&\, v = 0 \quad \text{on}\,\, y=0
\end{split}
\right. \quad(8)
$$

を課すと、次が導かれる。

$$
\begin{split}
\ff{\diff \bar{y} }{\diff t} = -\ff{1}{2\Gamma}\int_0^{\infty} v_0^2\,\diff y
\end{split}
\quad(9)
$$

同様に、

$$
\begin{split}
\ff{\diff \bar{x} }{\diff t} = \ff{1}{2\Gamma}\int_0^{\infty} u_0^2\,\diff x
\end{split}
\quad(10)
$$

となる。ただし、

$$
\left\{
\begin{split}
&\, u_0 = u(x,0) \EE
&\, v_0 = v(0,y)
\end{split}
\right. \quad(11)
$$

である。

 渦対が最初に、$x=0$ なる壁から大きな距離にあると仮定する。すると(9)は、対称軸上の速度場に依存する速度で $\bar{y}$ が減少することを予測する。渦対が壁に接近すると、渦は壁内の像渦度の作用により分離し始める。これは(10)により示され、それによると $u_0$ が壁上で無視できないほど小さくない時に $\bar{x}$ が増加する。

 最終的に、渦は十分離れて $v_0$ が無視できるようになる。渦の重心はその時壁から漸近的距離に達し、壁に平行に続く。(9)の右辺は常に負であるため、非粘性の状態では、有限サイズの渦やその変形がどれほど大きくても、渦度重心が壁に単調に接近し、壁に平行な線に漸近することを予測する。しかし、各渦の最終運動が定常であると断言することはできない。なぜなら、有限サイズの渦に対して最終状態が周期的または非周期的振動である可能性があるためである。(さらなるコメントについては§9.3を参照。)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次