剛体が角速度なしかつ、速度 $\B{U}$ で、無限に広がった非粘性非圧縮性の一様流体中を運動していると仮定する(物体外部には渦度がない)。この速度ポテンシャルは $\nabla^2 \phi = 0$ の解であり、以下を満たし、
$$
\begin{split}
\ff{\del \phi}{\del n} = \B{U}\cdot \B{n}\quad \text{on}\,S_B
\end{split} \qquad(1)
$$
そして、このポテンシャルは無限遠で消失する。物体が単連結であれば、$\phi$ は(1)によって一意に決定される。そうでなければ、$\phi$ は物体を単連結にするような障壁を横切る、一定のジャンプ $\Gamma_{\A}$ によって固定される循環運動の範囲内で不定となる。方程式の線形性により、
$$
\begin{split}
\phi = \Phi^{j} U_j+\Gamma_{\A}\chi_{\A}
\end{split} \qquad(2)
$$
ここに $\DL{ \ff{\del \Phi^j}{\del m} = n_j\,\,\text{on}\,S_B}$ であり、$\Phi^j, \chi_{\A}$ は物体の形状と物体に対する相対位置のみの関数である。(4.1.1)への代入から、物体の仮想運動量は次のように表される:
$$
\begin{split}
\B{I}_B = \B{I}_B^jU_j+\Gamma_{\A}\B{I}^{\A}
\end{split} \qquad(3)
$$
ここに、
$$
\begin{split}
\B{I}_B^j = \int \Phi^j\B{n}\,\diff S_B,\quad \B{I}^{\A} = \int \chi_{\A}\B{n}\,\diff S_B
\end{split} \qquad(4)
$$
であり、$\B{I}_B^j$ のデカルト成分 $M_{ij}$ は仮想質量テンソルを構成する。このテンソルは対称的である。なぜなら構成により $n_i = \DL{ \ff{\del \Phi^i}{\del n} }$ であり、物体と無限遠の間の領域にグリーンの定理を適用すると、
$$
\begin{split}
\int \left( \Phi^j \ff{\del \Phi^i}{\del n}-\Phi^i\ff{\del \Phi^j}{\del n} \right)\diff S_B = 0
\end{split}
$$
となるからである。
また、流体の運動エネルギーの考察から、これが正定値であることも示すことができる。物体の運動量は $M_B\B{U}$ であり、ここで $M_B$ は物体の質量である。循環定数 $\Gamma_{\A}$ はケルビンの定理により不変である。この運動方程式(4.1.5)は次のようになる:
$$
\begin{split}
(M_B\delta_{ij}+M_{ij})\ff{\diff U_j}{\diff t} = f_{B_i}
\end{split} \qquad(5)
$$
したがって、定常運動を維持するのに力は必要ない。この結果はダランベールのパラドックスと呼ばれ、経験と矛盾する。パラッドクスの原因は、粘性力の無視にあるのではなく、物体外部の流体に渦度がないという仮定にある。実際の流体中を運動する物体は、その後方に渦度を含む後流を持ち、それが減衰の主因となる。
要するに、現実では、運動を維持するためにはトルクを加える必要があるということである。例えば、次のような関係を考えてみよう。
$$
\begin{split}
\B{x} = \B{U}t+\B{x}’
\end{split} \qquad(6)
$$
これをを(4.3.1)に代入すると、ここに $\B{x}’$ は体積中心に対して測られる。すると、
$$
\begin{split}
\B{A}_B = t\B{U}\times \B{I}_B+\int \phi\,\B{x}’\times \B{n}\,\diff S_B
\end{split} \qquad(7)
$$
(7)の積分は、物体が回転なしで定常運動している時は一定となる。同様に、物体の角運動量も一定となる。したがって外力によって加えられるべきトルクは、(4.3.3)によって与えられ、次のようになる。
$$
\begin{split}
\B{G} = \B{U}\times \B{I}_B
\end{split} \qquad(8)
$$
このトルクは原点周りのものであるが、合力が零であるため、任意の点周りのトルクとも言える。
トルクは $\B{I}_B$ が $\B{U}$ に平行な時に消失する。これは速度が仮想質量テンソルの主軸に平行な時に起こる。主軸のうち任意の2つが等しい場合、これら2つによって形成される平面内の任意の方向が主軸となり、それに平行な運動はトルクを受けない。3つの主軸がすべて等しい場合、任意の方向の運動に対してトルクはない。したがって、例えば立方体の定常運動にはトルクは作用しない。
この節の考察は、2次元と3次元の両方の運動に適用され、前者の場合は力は単位長さあたりであり、物体周りに循環はないと理解される。結果は2次元で循環がある場合は大きく異なり、以下に述べる。
今、半径 $a$ の球と円柱の仮想質量テンソルは $M’\delta_{ij}$ であり、さらに $M’$(仮想質量と呼ばれる)は、それぞれ以下である。
$$
\begin{split}
M’ = \ff{2}{3}\pi a^3,\quad M’ = \pi a^2
\end{split} \qquad(9)
$$
半径 $a$ の円板の場合、主値の非零項は、明らかに円板の平面に垂直な運動に対するものである。ラム[1932 §114]は一般的な形状の楕円体の公式を与えている。
$$
\begin{split}
\left( \ff{8}{3}a^3,0,0 \right)
\end{split} \qquad(10)
$$
物体はその等価な束縛渦度系によって置き換えることもでき、現在の議論は渦にも等しくよく適用され、定常渦(ヒルの球形渦など)を維持するのに正味の力は必要ない。しかし、一般に正味のカップルを加える必要があることを示している。これは、2つの定常自由渦を持つ Foppl 流や、球の後方の定常渦のような、渦と物体の組み合わせにも適用される。
物体が主軸の1つに対して小さな角度で運動すると仮定し、それを $x$ 軸としよう。そして、他の座標軸を他の主軸に沿って配置する。速度が $(u, v, w)$ であり、$v, w ≪ u$ の場合、仮想運動量は $\B{I}_B = (Au, Bv, Cw)$ であり、流体が物体に加えるトルクは一次までで、$(0, (C-A)uw, (A-B)uv)$ とできる。ここで $(A, B, C)$ は仮想質量テンソルの主係数である。$A > C$ かつ $A > B$ の場合、このトルクは速度が $x$ 軸に沿って整列するように物体を回転させる傾向がある。
つまり、自由運動は最初に $v$ と $w$ を正の値から減少させる傾向がある。仮想質量の最大係数の方向の運動は安定であり、そうでなければ不安定であると推測される。これは、円板が流れに垂直に設定される観察された傾向と、回転なしで対称軸に平行に運動する扁長楕円体が不安定であることと一致している。扁長楕円体の場合、$A/B = A/C \to 0$ で偏心率が $1$ に近づくとき、$A$ は対称軸に沿って取られる(ラム[1932 第V章]参照)。
仮想質量概念の簡単な応用は、任意の粘性の流体中で静止状態から放出された浮力または重い剛体(質量 $M$ )の初期加速度である。$t = 0+$ では流体中に渦度がなく、したがって初期瞬間において、
$$
\begin{split}
\ff{\diff }{\diff t}(M\B{U}+M:\B{U}) = \B{B}
\end{split} \qquad(11)
$$
ここで $\B{B}$ は浮力、$M$ は慣性質量テンソル、$\B{U}$ は質量中心の速度であり、静水圧中心と一致すると仮定され、その周りにトルクはない。初期加速度は次の逆変換から求められる。
$$
\begin{split}
M\ff{\diff \B{U}}{\diff t}+M:\ff{\diff \B{U}}{\diff t} = \B{B}
\end{split} \qquad(12)
$$
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