オイラーの運動方程式(1.9.1)に現れる $\B{u}\times \B{\om}$ の項は、渦力と呼ばれる等価な物体力として解釈されてきた。この考えは Prandtl[1918] によって提唱され、Karman and Burgers[1934]によって翼周りの流れの説明で広く使用されてきた。この考えは、定常運動における束縛渦度の概念と組み合わせると最も有用に働くと思われる。実際、固定体積 $V$ を通して(1.9.1)を積分すると、次式が得られる:
\begin{split}
\ff{\del }{\del t}\int \B{u}\,\diff V &= -\int p_T\,\B{n}\,\diff S + \int \big( \B{u}\times \B{\omega}+\B{F}\big)\diff V \qquad(1)
\end{split}
ここで、$\DL{ p_T = p+\ff{1}{2}\B{u}^2 }$ はとして、全圧項と呼ばれる量である。(\B{n} は流体から外向きの法線ベクトルという慣例を用いている)。左辺は $V$ 内の流体の運動量の変化率を表し、(一般的には、瞬間的に体積 $V$ を占める流体の物質体積の運動量の変化率とは同じではない)。流れが定常である場合、この項は消失する。ここでは定常流のケースを仮定することにしよう。
今(1)は、$V$ の表面に作用する全圧と外力および渦力の平衡を表している。$V$ の外部で外力が作用せず、境界上でベルヌーイ定数が一様である場合(これは流線面である場合に成り立つ)、$\DL{\int \B{n}\diff S=\B{0}}$(閉曲面上で)のため、右辺第一項の表面積分は消失する。これより、平衡状態においては、定常流れを維持するために必要な外力が渦力によって決定されることが分かる。
あるいは、定常流れにおいて $\B{u}\times \B{\om}$ が単一値スカラーの勾配でない場合(これは圧力に吸収できる)、平衡を維持するためには、保存的でない外部物体力が供給されなければならないと言える。
第2章4節で示したように、流体に対して相対的に運動する物体Bは、運動学的に(無限の方法で)像渦度の分布によって置き換えることができる。定常運動では、この渦度分布は物体に対して固定されるため、それゆえ束縛渦度と呼ばれる。これは一般的に、ヘルムホルツの法則を満たさない。なぜなら、平衡を維持するために、渦力のバランスを取る必要があり、束縛渦度に外部物体力が供給されなければならないからである。ヘルムホルツの法則を満たす渦度(すなわち、外力が保存的である場合の物体外部)は、自由渦度と呼ばれている。(大域的に一定のベルヌーイ定数 $H$ を持つ定常流れでは、自由渦度は§1.9で示されるように流線に平行である)
今、流体によって物体に加えられる力の総和を $\B{D}$ としよう。すると、流体に適用される全外力は $-\B{D}$ となる。束縛渦度を含み、その境界で全圧が一定であるような体積 $V$ に式(1)を適用すると、次式が得られる。
\begin{split}
\B{D} = \int \B{u}\times \B{\om}\,\diff V \qquad(2)
\end{split}
したがって、全渦力は考えている特定の像系に無関係であることが分かる。これは次の恒等式からも直接導かれる。
\begin{split}
\int_B \B{u}\times \B{\om}\,\diff V &= \int_B\left( \ff{1}{2}\nabla \B{u}^2-\B{u}\cdot \nabla\B{u} \right)\diff V \EE
&= \int_S\left( \ff{1}{2} \B{u}^2\B{n}-\B{u}(\B{u}\cdot \B{n}) \right)\diff S \qquad(3)
\end{split}
右辺は物体上の速度によって決定され、速度と渦度を物体内に拡張して像系を与える方法とは無関係である。
例として、循環 $\Gamma$ を持つ半径 $a$ の円柱周りの非回転流れを考えてみよう。円柱軸は $z$ 軸に沿っており、運動は $xy$ 平面内で二次元流であるとする。今、速度ポテンシャルはラプラス方程式を満たし、$r=a$ にて $\DL{\ff{\del \phi}{\del r} = 0 },$ $r\to \infty$ で $\phi\sim Ur\cos\q$ である。そして円柱を反時計回りに一周する際の $\phi$ の増加が $\Gamma$ であることが要求される。唯一の解(例えば変数分離によって得られる)は:
\begin{split}
\phi = -Ur\cos\q-\ff{Ua^2}{r} \cos\q+\ff{\Gamma \q}{2\pi} \qquad(4)
\end{split}
今、物体を取り除き、束縛渦度の分布で置き換えることを考えよう。このとき、渦線は $z$ 方向を向き、$\B{\om}=\left(0,0,\omega\right)$ で表せて、また、渦度分布は速度場の拡張を与えるように選択される。無数の可能性の内の一つは:
\begin{split}
\om = \ff{\Gamma}{\pi a^2}+\ff{8Uy^2}{a^2}\quad(r<a) \qquad(5)
\end{split}
というもので、これは円柱内の軸対称速度場と一致する。要するに、
$$
\left\{
\begin{split}
&\, u=-U\ff{x^2+3y^2}{a^2}+U-\ff{\Gamma y}{2\pi a^2} \EE
&\, v=\ff{2Uxy}{a^2}+\ff{\Gamma x}{2\pi a^2}
\end{split}
\right. \qquad(6)
$$
これを式(2)に適用して、力の総和を計算すると、自由流に平行な成分は消失して、自由流に垂直な方向の成分、つまり揚力 $L$ だけが残って、
\begin{split}
L=-\int_{r<a}\B{u} \om \diff x\diff y = U\Gamma \qquad(7)
\end{split}
という結果が得られる。
これは速度 $U$ で運動する循環 $\Gamma$ を持つ翼の単位長さ当たりに作用する、有名なクッタ・ジューコフスキーの揚力である。もちろん、与えられた循環に対して揚力が物体の形状に無関係であることも上式は示している。より簡単な導出方法もある。
渦力の概念は、外力を受ける直線渦線の速度の結果を与えるためにも使用できる。渦と共に運動する座標系では、渦力は単位長さあたり $(\B{U}-\B{U}_V)\times \B{\Gamma} $ である。なお、$\B{\Gamma}=\Gamma \B{k}$ である。さらに、次式の平衡が要求される。
\begin{split}
\B{F}+(\B{U}-\B{U}_V)\times \B{\Gamma} = \B{0} \qquad(8)
\end{split}
これは式(2.3.18)と等価である。
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