一様な密度の流体中に渦層がある状況を考え、その運動を調べることにしよう。このとき、ある時刻 $t$ において、渦層の位置は、弧長 $s$ を媒介変数として、$x=X(s,t), y=Y(s,t), z=x+iy=Z(s,t)$ の方程式で表される。そして、渦層の強さ(接線方向速度の不連続量)を $\kappa(s,t)$ と記すと約束する。このとき(§2.2参照)、渦層が誘起する速度場は、
$$
\begin{split}
u-iv = -\ff{i}{2\pi} \int \ff{\kappa(s’, t)\,\diff s’ }{z-Z(s’,t)}
\end{split} \qquad(1)
$$
と記述される。
場のある点 $z$ が渦層上にあるとき、位置 $s$ における平均誘起速度は、主値により、
$$
\begin{split}
\widetilde{U}-i\widetilde{V} = -\ff{i}{2\pi}\,\,\RM{p.v.}\int \ff{\kappa(s’, t)\,\diff s’ }{z-Z(s’,t)}
\end{split} \qquad(2)
$$
と定義する。ここに $\DL{ \RM{p.v.}\int }$ は主値積分を意味する。(1) 式で $z\to Z(s,t)$ として渦層の両側から近づけた二つの極限の算術平均になっていることが示せる。
さらに、渦層が誘起する速度に加えて、物体・連続渦度分布・他の渦面や特異点などにより、渦層上で連続な外部速度場 $U_E-iV_E$ が存在するとする。このとき、渦層の速度は以下のようになる。
$$
\begin{split}
\ff{\diff \overline{Z}}{\diff t} = U-iV = \widetilde{U}-i\widetilde{V}+U_E-iV_E
\end{split} \qquad(3)
$$
ここで我々は、渦層上の二点 $P_1, P_2$ の間の総渦度(循環)を $\Gamma(P_1,P_2)$ と定義することにする。§2.2で示したように、外力が渦層に作用しない限り $\Gamma$ は保存される。すなわち、以下が成立する。
$$
\begin{split}
\ff{\diff \Gamma}{\diff t} = 0
\end{split} \qquad(4)
$$
また、$P_1,P_2$ は (3) 式に従う速度で移動する。
ここで変数変換を行い、渦層の形状と強さを $\Gamma$ と $t$ を用いた媒介表示で与えることを考える。要するに、
$$
\begin{split}
z = Z(\Gamma, t)
\end{split} \qquad(5)
$$
これは、渦層の軌跡を表し、そして $\DL{ \kappa = \left| \ff{\del Z}{\del \Gamma} \right|^{-1} }$ である。また、$\kappa \diff s = \diff \Gamma$ であり、そして (2) と (4) から、次のように表現できる。
$$
\begin{split}
\ff{ \del \overline{Z}}{\del t}(\Gamma, t) = -\ff{i}{2\pi}\,\RM{p.v.}\int \ff{\diff \Gamma’}{Z(\Gamma,t)-Z(\Gamma’,t)}+U_E-iV_E
\end{split} \qquad(6)
$$
この非線形・特異積分微分方程式を Birkhoff–Rott 方程式 と呼ぶ。明示的な形は Birkhoff [1962] に、また Rott [1956] の仕事に含意されている。初期の形状と強さが与えられれば渦層の時間発展を記述できる。像渦度を通じて $U_E-iV_E$ が渦層の形状や強さに暗に依存する場合がある点に注意。運動学的条件(法線速度の連続)と圧力の連続がともに満たされ、記述としてはエレガントであるが、数値計算には必ずしも最適とは限らないのが難点である。
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