非圧縮性流体の二次元運動において、渦度 $ \omega(x, y, t) $ と流れ関数 $\psi(x, y, t)$ と表すとする。ここに、$\DL{ u=\ff{\del \psi}{\del y},\,\, v = -\ff{\del \psi}{\del x} }$ は次の関係で結ばれている。
$$
\begin{split}
\psi (x,y,t) = -\ff{1}{2\pi}\int \om(x’,y’,t) \log r\,\, \diff x’\diff y’+\Psi(x,y,t)
\end{split} \quad(1)
$$
ただし、$r = \sqrt{(x-x’)^2+(y-y’)^2}$ そして、$\nabla^2 \Psi =0$ とする。流体が無限に広がり、かつ無限遠では静止しており、また渦度分布が有限範囲に限定されている場合には、$\Psi = 0$ となる。なお、粘性の影響がないときは渦度は式3.10.7を満たす。
2章3節で述べたように、点渦あるいは線渦は特異な分布、$\om = \kappa \delta(\B{r}-\B{R})$ で表される。この渦は外力が存在しない限り流体とともに移動して、速度場は次のように与えられる。
$$
\begin{split}
\B{u} = \ff{\kappa}{2\pi}\ff{\B{k}\times (\B{r}-\B{R}) }{|\B{r}-\B{R}|^2}+\B{u}_F(\B{r},t)
\end{split} \quad(2)
$$
ここに、$\B{u}_F$ は $\B{R}$ 近傍で非特異な速度場である。また、$\B{u}_F$ は必ずしも渦無し流(回転の無い流れ)である必要は無い。特異な点渦は連続的な渦度分布の場の中に置かれることもあるが、通常はそう仮定しない。
渦の運動は具体的には次式で与えられる。
$$
\begin{split}
\ff{\diff \B{R}}{\diff t} = \B{u}_F(\B{R},t) \quad\,\, \kappa = const.
\end{split} \quad(3)
$$
$N$ 個の渦が存在する場合、それぞれ強さ $\kappa_j,$ 位置 $\B{R}_j(t)$ を持つとすると、流れ関数 $\psi$ は次のように表される。
$$
\begin{split}
\psi = -\sum_{j=1}^N \ff{\kappa_j}{2\pi} \log |\B{r}-\B{R}_j|+\Psi
\end{split} \quad(4)
$$
ここに $\Psi$ は渦の近傍では非特異であり、無限遠で静止する流体の場合には消える。このとき、速度場は次式で与えられる。
$$
\begin{split}
\B{u} = -\B{k}\times \nabla \psi
\end{split} \quad(5)
$$
そして運動は、次の $2N$ 個の非線形常微分方程式系で記述される。
$$
\begin{split}
\ff{\diff \B{R}_j}{\diff t} = {\sum_k}’ \ff{\kappa_k}{2\pi} \ff{\B{k}\times (\B{R}_j-\B{R}_k)}{|\B{R}_j-\B{R}_k|^2}-\B{k}\times \nabla \Psi(\B{R}_j,t)
\end{split} \quad(6)
$$
なお、総和のプライム(’)は、発散する項を除害していることを意味している。
$\Psi$ は通常、物体が存在する場合に決まり、ラプラス方程式に対するディリクレ境界条件を持つグリーン関数を求めることで計算される。したがって、点渦系の運動は常微分方程式系の解を求める問題に帰着し、これは力学系理論の範囲で扱われる。
これらの渦の配置に関して、最も単純な例は渦対(vortex pair)である。
• 反対回転渦対(counter-rotating vortex pair):
強さ $±\kappa$ の2つの渦が距離 $b$ だけ離れて存在する渦対。このペアは、中心を結ぶ線に垂直な方向に速度 $U = \DL{\ff{\kappa}{2\pi b}}$ で移動する。
• 同方向回転渦対(co-rotating pair):
強さが等しい2つの渦(符号が同じ)が距離 $b$ だけ離れており、中心を回転の中心として角速度 $\Omega = \DL{\ff{\kappa}{\pi b^2}}$ で互いに回る。3つの渦系の運動方程式は積分可能(可積分)であるが、3個を超える場合、運動は一般に非定常で不規則になる。(この分野の詳細なレビューは Aref [1983] を参照。)
いくつかの特別な平衡条件は興味深い。たとえば、$N$ 個の等強度渦が正多角形の頂点に配置される場合(Kelvin [1878], Thomson [1883])。ここでは Havelock [1931] の取り扱いに従う。明らかに、渦が半径 $a$ の円の円周上に配置されているとき、この正多角形は形を変えずに一定の角速度 $\Omega = \DL{ \ff{\kappa(N-1)}{4\pi a^2} }$ で回転する平衡状態にある。この平衡配置が微小擾乱に対して安定かどうかを線形安定性解析で調べることにする。
ここでは、$n$ 番目の渦が、半径方向に $a + r_n$ だけ変位し、角度方向に $\DL{ \ff{2\pi n}{N} + \Omega t + \q_n }$ だけずれると仮定する。速度場は先の式(6)で与えられる。これを代入し、$r_n$ と $\q_n$ に関して線形化すると、$n=1$ の渦に対して次のような式が得られる(詳細な代数計算を経て)。
$$
\left\{
\begin{split}
\dot{r}_1 &= -\ff{\kappa}{4\pi a} \sum_{n=1}^{N-1} \ff{\q_{n+1}-\q_1 }{1-C_n} \qquad(7) \EE
a\dot{\q_1} &= -\Omega r_1+\ff{\kappa}{4\pi a} \sum_{n=1}^{N-1} \left\{ \ff{C_n}{1-C_n}\ff{r_1}{a}-\ff{1}{1-C_n}\ff{r_{n+1}}{a} \right\} \qquad(8)
\end{split}
\right.
$$
ここに、$C_n = \DL{\cos \left( \ff{2n\pi}{N} \right) } $ であり、$\DL{ \sum_{i=1}^{N-1}\ff{1}{1-C_n} = \ff{1}{6}(n^2-1) }$ を用いると、上の方程式を書き換えられて、
$$
\left\{
\begin{split}
\ff{4\pi a}{\kappa} \dot{r}_1 &= A\q_1-\sum_{i=1}^{N-1}c_n \q_{n+1} \qquad(9) \EE
\ff{4\pi a^3}{\kappa} \dot{\q_1} &= Br_1-\sum_{i=1}^{N-1}c_n r_{n+1} \qquad(10)
\end{split}
\right.
$$
となる。ただし、$\DL{ c_n = \ff{1}{1-C_n},\, A=\ff{1}{6}(N^2-1),\, B=\ff{1}{6}(N-1)(N-11) }$ である。他の渦に対しても、これらの方程式と同様のことが言えて、例えば $m$ 番目の渦に対しては、
$$
\left\{
\begin{split}
\ff{4\pi a}{\kappa} \dot{r}_m &= A\q_m-\sum_{i=1}^{N-1}c_n \q_{n+m} \qquad(11) \EE
\ff{4\pi a^3}{\kappa} \dot{\q_m} &= Br_m-\sum_{i=1}^{N-1}c_n r_{n+m} \qquad(12)
\end{split}
\right.
$$
$n+m=(n+m)\,\, \text{mod}\,\, N$ という慣例的な命名即に従うとする。回転不変性から、以下の形の固有関数が期待される。
$$
\left\{
\begin{split}
&\,\, r_m = \A(t)\, e^{\ff{2km \pi i}{N}} \EE
&\,\, \q_m = \beta(t)\, e^{\ff{2km \pi i}{N}}
\end{split}
\right. \qquad(13)
$$
$0 ≦ k ≦ N – 1$ に対して、$N$ 個の独立した固有関数が対応している。
$k$ を分数波数とみなすこともできる。$k = 0$ のとき、すべての渦は同じように振る舞う。この比が整数のとき、波長 $N/k$ が存在する。(13) を (11) と (12) に代入すると、(13) の解が存在することが示される。
$$
\left\{
\begin{split}
&\,\, \ff{4\pi a}{\kappa} \dot{\A}(t) = A\beta-S\beta \EE
&\,\, \ff{4\pi a^3}{\kappa} \dot{\beta} = B\A-S\A
\end{split}
\right. \qquad(14)
$$
ここに、
$$
\begin{split}
S = \sum_{i=1}^{N-1} \ff{ e^{\ff{2kn \pi i}{N}}}{ 1-\cos\left( \ff{2n\pi}{N} \right) } = \ff{1}{6}(N^2-1)-k(N-k)
\end{split}
$$
さらに、$α$ と $β$ は $e^{\sigma t}$ に比例するため、
$$
\begin{split}
\sigma^2 = \left( \ff{\kappa}{4\pi a^2} \right) k(N-k)\big\{ k(N-k)-2(N-1) \big\}
\end{split}
\qquad(15)
$$
となる。
今、$k=0$ つまり、$\sigma = 0$ の場合、これは円の半径および角速度のわずかな変化に対応し、元の平衡状態の近傍にある新しい定常状態への移行を意味する。
他のモード $k \neq 0$ では、安定性は次の式の符号によって決まる。
$$
\begin{split}
D = k(N-k)-2(N-1)
\end{split}
\qquad(16)
$$
もし、$D > 0$ なら、系は指数的に不安定となる(擾乱が指数的に増大)。一方、$D < 0$ なら、系は線形的に安定である。さらに $D = 0$ なら、擾乱は時間に比例して増大する中立安定状態にあると言える。
$N>1$ の場合、少なくとも1つの $k$ に対して $D>0$ となるため、完全な安定状態は存在しないと言える。ただし $N<7$ では全ての $k$ に対して $D<0$ であり、安定であることが知られている。
$N=7$ の場合、$k=3,4$ に対して $D=0$ となり、他は安定となる。Havelock はさらに、非回転流を含む接線方向速度 $V(r)$ を加えた場合、外側・内側境界、または二重の渦輪が存在する場合などを解析している。これらの結果の詳細は Aref et al. [1988] によってレビューされている。
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