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10.1 定式化(Formulation)―第10章 軸対称渦輪

 軸対称渦の通常の現れ方は渦輪(いわゆるスモーク・リング)である。定常軸対称流の存在条件は§3.13で議論しており、その厳密解(ヒルの球状渦)§2.1で述べた。本章では、細いコアをもつ渦輪の計算を目的とする別の定式化を与えることにする。さて、円柱座標系 $(y,\phi,x)$ を導入する。なお、$y$ を半径方向、$x$ を軸方向、$\phi$ を方位角とする。速度 $\B{q}$ の各成分は $(v,w,u)$ である(図10.1-1参照)。さて、軸対称性から $\DL{\ff{\del}{\del \phi}=0}$ を要請する。また、流体は非圧縮であるとして、(ストークスの)流れ関数 $\psi(x,y,t)$ が存在して、次を満たす。

$$
\left\{
\begin{split}
&\, u = \ff{1}{y}\ff{\del \psi}{\del y} \EE
&\, v = -\ff{1}{y}\ff{\del \psi}{\del x}
\end{split} \qquad(1)
\right.
$$

§3.13 も参照のこと。ただしそちらは記法が異なる)連続の式(運動学)はスワール速度 $w$ に制約を課さない。
渦度 $\boldsymbol{\omega}$ の成分はこのように表せる。

$$
\begin{split}
\B{\om} = \left(-\ff{\del w}{\del x}, \ff{\del v}{\del x}-\ff{\del u}{\del y}, \ff{1}{y} \ff{\del (wy)}{\del y} \right) = (\om_y, \om_{\phi}, \om_x)
\end{split} \qquad(2)
$$

式(1)の流れ関数の観点から見ると、方位角渦度はこのように表せる。

$$
\begin{split}
\om_{\phi} = -\ff{1}{y}\ff{\del^2 \psi}{\del x^2}-\ff{\del}{\del y}\left( \ff{1}{y}\ff{\del \psi}{\del y} \right)
\end{split} \qquad(3)
$$

さらに、$w=0$(つまり渦無し)の場合、ベクトルポテンシャル $\B{A}$ は流れ関数と次の関係にあることに注意されたい。なお、$\widehat{\B{\phi}}$ は方位角方向の単位ベクトルを表すとする。

$$
\begin{split}
\B{A} = \ff{\psi}{y} \widehat{\B{\phi}}
\end{split} \qquad(4)
$$

 今、式(3)を積分すると、渦度を用いた速度が得られる(式(1.1.18)参照)。この式に代入すると、

$$
\left\{
\begin{split}
&\, r = \sqrt{ (x-x’)^2+y^2+y’^2-2yy’\cos(\phi-\phi’) } \EE
&\, \diff \B{x}’ = y’\,\diff x’\diff y’\diff \phi’ \EE
&\, \B{\om}’ = \om’_{\phi} \widehat{\B{\phi}}’ \cos(\phi-\phi’)+\om’_{\phi} \widehat{\B{y}}’ \sin(\phi-\phi’)
\end{split} \qquad(5)
\right.
$$

が得られる。ここに、$\q = \phi-\phi’$ と置くと、$(x,y)$ における流れ関数はこのようになる。

$$
\begin{split}
\psi(x,y) = \ff{1}{4\pi} \iint yy’\om(x’,y’)\diff x’\diff y’ \int_0^{2\pi} \ff{\cos\q\,\diff\q}{ \sqrt{ (x-x’)^2+y^2+y’^2-2yy’\cos\q } }
\end{split} \qquad(6)
$$

 この(6)は、半径 $\sigma$、強さ $\diff x\diff y$ の微小円形渦糸(面 $x=0$ 上にある)が $(x,y)$ に作る流れ関数 $G(x,y,\sigma)$ として、以下のように解釈できる。

$$
\begin{split}
G = \ff{y\sigma}{4\pi}\int_0^{2\pi} \ff{\cos\q\,\diff\q}{ \sqrt{ x^2+y^2+\sigma^2-2y\sigma\cos\q } }
\end{split} \qquad(7)
$$

この積分は、次のように定義される第一種および第二種の完全楕円積分によって表される。($k$ は母数)

$$
\left\{
\begin{split}
&\, K(k) = \int_0^{\ff{1}{2}\pi} \ff{\diff u}{\sqrt{1-k^2\sin^2u}} \EE
&\, E(k) = \int_0^{\ff{1}{2}\pi} \sqrt{ 1-k^2\sin^2u }\,\,\diff u
\end{split}
\right.
$$

なお、

$$
\begin{split}
k^2 = \ff{4y\sigma}{x^2+(y+\sigma)^2} = 1-\ff{r_1^2}{r_2^2}
\end{split}
$$

である。ここに、$r_1,r_2$ は場中の点から円までの最小と最長距離を表すとする。標準変換を施すと、このようになる。

$$
\begin{split}
G = \ff{\sqrt{y\sigma}}{2\pi} \left[ \left( \ff{2}{k}-k \right)K(k)-\ff{2}{k}E(k) \right]
\end{split} \qquad(8)
$$

また、Landen 変換(Lamb [1932] §161)を施すと、以下の同値形が得られる。

$$
\begin{split}
G = \ff{\kappa}{2\pi}(r_1+r_2)\Big[ K(\lambda)-E(\lambda) \Big] \qquad \left( \lambda=\ff{r_2-r_1}{r_2+r_1} \right)
\end{split} \qquad(9)
$$

循環 $\kappa$ をもつ円形渦糸は、その円盤を一様に満たす双極子面分布に等価であるから、変数分離で速度ポテンシャル → 流れ関数をベッセル関数の積分として得ることができる(Lamb[1932 §161])。具体的にはこのようになる。

$$
\begin{split}
G = \ff{1}{2}y\sigma \int_0^{\infty} e^{-\lambda x} J_1(\lambda y)J_1(\lambda \sigma) \diff \lambda
\end{split} \qquad(10)
$$

 $x>0$ の場合である。この定式化は一見、何の利点ももたらさないように見える。興味深い問題は、非粘性流体における定常渦輪の存在である。旋回がない場合においては、この問題は次のように表現できる。領域 $A$, 境界 $\del A$ として, $A$ の外側で $\omega_{\phi}=0$, そして $A$ の内側で速度 $U$, 渦度分布 $\omega_{\phi}=yF(\Psi)$ となるような領域 $A$ について考える。この場合、積分方程式の解 $\Psi$ は以下の様になる。

$$
\begin{split}
\Psi(x,y) = -\ff{1}{2}Uy^2+\iint_A y’F\Big( \Psi(x’,y’) \Big) G(x-x’,y,y’)\diff x’\diff y’
\end{split} \qquad(11)
$$

 ところで、$\Psi$ は境界 $\del A$ 上で一定になるのだろうか?この問いに対する答えを話す前に、一般に $\del A$ は渦跳躍であり、自動的に満たされる速度の連続性は圧力の連続性も意味することに注意しよう。今、関数 $F$ は任意であるが、2つの極限が重要である。まず、$F \equiv const.$ は一様渦輪を与える。 もし、$A$ 内で $F=0$ ならば、空洞ないしは停滞渦輪であり、その境界は渦層であり、そして $F$ はデルタ関数になる。

 この数学的問題は Lichtenstein [1925] が最初に取り扱っているが、彼の扱いは不完全で、また動力学的に矛盾していた。なぜなら、$A$ 内で $\om_{\phi} = const.$ が可能であると仮定していたからである。

 続く、Fraenkel [1970] はコアサイズが十分に小さい場合、つまり $A/\overline{R} \ll 1$($\overline{R}$ は領域の重心から $x$ 軸までの距離)のときの渦輪の存在を証明している。そして、有限の $A/\overline{R}$ についての存在証明は Fraenkel と Berger [1974] により与えられている。

 さらに、スワールがある場合、定常運動のためにはさらに以下の項を追加する必要がある。(§3.13)この場合の存在定理は、著者の知る限りまだ与えられていない。

$$
\left\{
\begin{split}
&\, yw = C(\Psi) \EE
&\, \om_{\phi} = yF(\Psi)+\ff{C}{y}\ff{\diff C}{\diff \Psi}
\end{split} \qquad(12)
\right.
$$

 断面が凸で明確な境界をもつ渦輪について、Fraenkel[1972]と Norbury[1973]は、渦輪半径を $\DL{ R=\ff{1}{2}(y_{\RM{min}}+y_{\RM{max}}) }$ と定義し、無次元コア径を $\DL{ \eps=\sqrt{ \ff{A}{\pi R^2} } }$ としている。

 $a$ をほぼ円形のコアの半径として、$\DL{A\to0, \eps\sim \ff{a}{\overline{R}}, R\sim \overline{R} }$ という正規化を考えることにしよう。この正規化において、ヒルの球形渦は $\eps = \sqrt{2}$ に対応する。Fraenkel とNorbury は近似解析と数値解析を駆使して、$0 < \eps \leq \sqrt{2}$ の範囲のスワール無しの一様渦輪について論じている。Norbury [1972] は$\sqrt{2}-\eps \ll 1$ の範囲の解の存在についても考察しており、これらは 「中心の小孔を持つヒルの球形渦」に相当する。

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