薄いコアをもつ渦環の速度を計算する別の方法は、Lamb [1932, §162] によって与えられた取り扱いに基づくものである。この方法は、直接法に伴う煩雑な代数計算を避けられるだけでなく、粘性、スワール、非定常性、圧縮性へ比較的容易に拡張可能な利点を持つ。Lamb の方法は Saffman [1970] により、非一様な渦度分布にも適用されている。
まず、無限遠で速度がゼロとなる流体の、固定座標系における薄いコアの渦環について考える。このとき、運動エネルギー $E$ は(3.11.3)、インパルス $\B{I}$ は(3.2.8)で与えられる。ここに以下の表現を与える。
$$
\begin{split}
\B{u} = \B{U}+\widetilde{\B{u}}
\end{split} \qquad(1)
$$
今、$\B{U}$ は渦環の並進速度である。なお、粘性や非定常性を扱う際には定義を明確にする必要があることに注意を要する。このとき所与の関係式が得られる。
$$
\begin{split}
E = 2\,\B{U}\cdot \B{I}+\int \widetilde{\B{u}}\cdot\big( \B{x}\times \B{\om} \big)\diff V
\end{split} \qquad(2)
$$
以後の議論では、薄い渦環に対してはグリーン関数(2.9)の先頭次数近似だけで $\DL{O\left(\ff{a}{R}\right)}$ の誤差で $E$ と $U$ を評価できることを利用する。
$$
\begin{split}
G(r,\q,r’,\q’) = \ff{R}{2\pi} \left[ \log \ff{8R}{ \sqrt{r^2+r’^2-2rr’\cos(\q-\q’)} }-2\,\right]
\end{split} \qquad(3)
$$
ここに $r,\theta$ は、軸から距離 $R$ にあるコア中心まわりの極座標である。そして、コア内の渦度による流れ関数の積分表示はこのようになる。
$$
\begin{split}
\psi = \iint_A \om_{\phi}’\,G\, \diff A’
\end{split} \qquad(4)
$$
今、コアが円形(半径 $a_0$ )で粒子の軌道が中心周りの円であると仮定して、上式に式(3)を代入して、渦度をこのように表せると考えると、
$$
\begin{split}
\om_{\phi} = \om_0(r)
\end{split} \qquad(5)
$$
以下を得る。ただし、$r>r’$ にて $r_>=r$、$r<r’$ にて $r_> = r’$ であるとする。
$$
\begin{split}
\psi ≈ \psi_0(r) = R\int r’\om_0(r’)\big[ \log 8R-2-\log r_{>} \big]\diff r’
\end{split} \qquad(6)
$$
次に、半径 $r$ の円周に沿う循環を $\G_0(r)$ として以下のように定義して、$\G_0(a) = \G$ と書くことにする。
$$
\begin{split}
\G_0(r) = \int_0^r 2\pi s \,\om_0(s)\,\diff s
\end{split} \qquad(7)
$$
すると、部分積分の後、$r<a$ の範囲でこれを得る。
$$
\begin{split}
\psi_0 = \ff{R\G}{2\pi}\left( \log\ff{8R}{a}-2 \right)+\ff{R}{2\pi}\int_r^a \ff{\G_0(s)}{s}\,\diff s
\end{split} \qquad(8)
$$
したがって、このような対応を見出せて、
$$
\begin{split}
\pi \iint_A \om_{\phi}\psi \diff A ≈ \ff{1}{2}R\G^2\left[ \log \ff{8R}{a}-2 \right]+\ff{1}{2}R\int_0^a \ff{\G_0(s)^2}{s}\diff s
\end{split} \qquad(9)
$$
さらに、軸方向のインパルスを
$$
\begin{split}
I = \pi \iint_A y^2\om_{\phi}\,\diff A ≈ \pi \G R^2
\end{split} \qquad(10)
$$
と表現できる。次に、メリディオナル(子午面)流れに加えて、渦環の軸を中心とするスワール速度 $w$ がコア内部に局在している場合を考える。このとき運動エネルギー $E$ は厳密に、
$$
\begin{split}
E = \pi \iint_A y(u^2+v^2+w^2)\,\diff x\,\diff y = \pi \iint_A \om_{\phi} \psi\,\diff A+\iint_A y\,w^2\, \diff A
\end{split} \qquad(11)
$$
これの最終項は式(2)から、
$$
\begin{split}
\int \widetilde{\B{u}}\cdot \B{x}\times \B{\om}\,\diff V = 2\pi \iint_A y\,\om_{\phi}(y\widetilde{u}-x\widetilde{v})\diff A+2\pi \iint_A yw(x\om_y-y\om_x)\diff A
\end{split} \qquad(12)
$$
という関係にあると言えるので、(1.2)で与えられた渦度成分を (12) の最後の項に代入すると、この式の値は次のようになる。
$$
\begin{split}
\pi \iint_A yw^2\diff A-\pi \iint_A \left\{ \ff{\del}{\del x}(xyw^2)+\ff{\del}{\del y}(y^2w^2) \right\}\diff A
\end{split} \qquad(13)
$$
さらに、無限遠にて $w=0$ であるとすると(13)の最終項は消失して、(2)より厳密に、
$$
\begin{split}
\pi \iint_A \om_{\phi}\psi\,\diff A = 2UI+2\pi \iint_Ay\om_{\phi}(y\widetilde{u}-x\widetilde{v})\diff A
\end{split} \qquad(14)
$$
という関係が得られる。
今、(14)式における最初の2項は、先頭次数 $\DL{O\left( \ff{a}{R} \right)}$ のオーダーの精度で、(9)と(10)により渦輪の強度と次元そして $\om_0(r)$ の関数として評価できる。なお、これらの項は $O(R\G^2)$ のオーダーであることに注意する必要がある。
問題となるのは最終項である。なぜなら、スケール評価($\om_{\phi}\sim \DL{\ff{\G}{a^2}}, \widetilde{u}\sim \DL{\ff{\G}{a}}, y\sim R, \diff A\sim a^2 $)から、最終項は $\DL{\ff{R^2\G^2}{a} }$ のオーダーであると言え、そのため、この項の先頭次数は消失しなければならないためである。しかしながら、これを成すためには $\om_{\phi}$ と $\widetilde{u}$ を $\DL{O\left( \ff{a}{R} \right)}$ のオーダーで正しく計算しなければならず、容易ならざることである。
Lamb 変換はこの困難を回避する。運動が定常であると仮定するとき、$U$ は一意(well defined)に定まることを利用する。渦輪と共に移動する相対座標系での速度成分 $\widetilde{u}, \widetilde{v}$ と方位渦度 $\om_{\phi}$ は渦輪と相対的に定常な運動の方程式(3.13.4参照)を満たす。
$$
\left\{
\begin{split}
&\, \ff{\del \widetilde{u}}{\del x}+\ff{1}{y}\ff{\del\,y\widetilde{v} }{\del y} = 0 \EE
&\, \widetilde{u}\ff{\del \om_{\phi}}{\del x}+\widetilde{v}\ff{\del \om_{\phi}}{\del y} = \ff{\widetilde{v}\,\om_{\phi} }{y}+\ff{1}{y}\ff{\del w^2}{\del x}
\end{split} \qquad(15)
\right.
$$
これより以下が得られる。
$$
\begin{split}
y^2 \widetilde{u}\,\om_{\phi}-xy\,\widetilde{v}\,\om_{\phi} = yw^2-3xy\,\widetilde{v}\,\om_{\phi}-\ff{\del}{\del x}\Big( w^2xy-xy^2\widetilde{u}\,\om_{\phi} \Big)+\ff{\del}{\del y}(xy^2\widetilde{v}\,\om_{\phi})
\end{split} \qquad(16)
$$
したがって、
$$
\begin{split}
2\pi \iint_A \Big( y^2\,\wt{u}\,\om_{\phi}-xy\,\wt{v}\,\om_{\phi} \Big)\diff A = -6\pi\iint_A xy\,\wt{v}\,\om_{\phi}\,\diff A+2\pi \iint_A y\,w^2\,\diff A
\end{split} \qquad(17)
$$
という関係が定常流において正確に成立すると言える。
右辺のオーダーは $\DL{O\G^2 R)}$ であり、そして、先頭次数近似から $\om_{\phi}=\om_(r), \wt{v}=\DL{\ff{\G_0(r)\cos\q}{2\pi r}}, w=w_(r)\diff A = 2\pi r\diff r$ と評価できる。よって、以下のラム変換が与えられる。(Shariff と Leonard [1992] は Helmholtz [1858] の方が先に Lamb 変換を与えていることを指摘している)
$$
\begin{split}
2\pi \iint_A \Big( y^2\,\wt{u}\,\om_{\phi}-xy\,\wt{v}\,\om_{\phi} \Big)\diff A ≈ -\ff{3}{4}R\G^2+4\pi^2 R \int_0^a rw_0^2\,\diff r
\end{split} \qquad(18)
$$
これを(14)に代入すると以下が得られる。
$$
\begin{split}
\ff{1}{2}\G^2 R\left( \log \ff{8R}{a}-2 \right)+\ff{1}{2}R\int_0^a \ff{\G_0(r)^2}{r}\diff r = 2\pi U R^2 \G-\ff{3}{4}R\G^2+4\pi^2 R\int_0^a rw_0^2\,\diff r
\end{split} \qquad(19)
$$
整理すると、
$$
\begin{split}
U = \ff{\G}{4\pi R} \left( \log\ff{8R}{a}-\ff{1}{2}+2\ff{\pi^2 a^2 \overline{v_{\q}^2}}{\G^2}-4\ff{\pi^2 a^2 \overline{w_0^2}}{\G^2} \right)
\end{split} \qquad(20)
$$
ここに、$\DL{ v_{\q}=\ff{\G_0(r)}{2\pi r} }$、上付きバーは断面の平均を表すとする。同じ議論からエネルギー $E$ についても、
$$
\begin{split}
E = \ff{1}{2}R\G^2 \left( \log\ff{8R}{a}-2+2\ff{\pi^2 a^2 \overline{v_{\q}^2}}{\G^2}+2\ff{\pi^2 a^2 \overline{w_0^2}}{\G^2} \right)
\end{split} \qquad(21)
$$
が得られる。
渦輪の速度に対する旋回速度の寄与は Widnall、Bliss、Zalay [1971] によって示されているが、彼らはそれを別の方法で導出している。注意すべき点として、旋回速度は渦輪の下方向を向いており、原理的には、十分に大きな旋回があれば、渦輪は後方に移動する可能性があるということである。中空または停滞したコアの場合、$v_{\q}$ と $w_0$ はゼロとなる。
コア内部の渦度分布が、$r=a$ にて鋭い境界を持たない場合、(20) と (21) の公式から一意に定義できる。この場合、$\log a$ と $v_θ$ を含む式を次の組み合わせに置き換えられて、このようにできる。
$$
\begin{split}
-\ff{\G}{4\pi R}\log a+\ff{1}{4\pi \G R}\int_0^a \ff{\G_0(r)^2}{r}\diff r
\end{split} \qquad(22)
$$
上式は $a$ と無関係で、十分大きな $a$ に対してはコア循環が $\G(a)=\G$ を満たすように定まる。同じ組み合わせは、エネルギーに対しても使う。例えば、Oseen-Lamb 粘性渦糸に対応する以下の循環分布をとると、
$$
\begin{split}
\G(r,t) = \G \left\{ 1-\exp\left( -\ff{r^2}{4\nu t} \right) \right\}
\end{split} \qquad(23)
$$
粘性渦輪の速度としてこれを得る。
$$
\begin{split}
U = \ff{\G}{4\pi R}\left[ \log\ff{8R}{\sqrt{4\nu t }}-0.558 \right]
\end{split} \qquad(24)
$$
このように、Lamb 変換(Lamb 変換は定常流を前提としている)は非常に有用であるが、現時点では非定常流に対しては無力であるし、$U$ についての定義も必要である。ただし、幸いなことに Saffman [1970] は、Lamb 変換が非定常軸対称流れに対して成立することを発見している。このとき、$U$ を渦重心(§3.9参照)位置 $X$ を用いて次のように定義する。これは言い換えると、(24)は三次元での渦重心の速度を与えるものであることを意味する。
$$
\begin{split}
U \equiv \ff{\diff X}{\diff t} \qquad \left( X=\ff{1}{2}\int \ff{(\B{x}\times \B{\om})\cdot \B{I}}{I^2}x\diff V \right)
\end{split} \qquad(25)
$$
Moore[1980]は、コアが先頭次数で Kirchhoff の回転楕円体(長短半径 $a,b$)である渦環に Lamb 変換を適用し、このとき基本的な運動は不安定となるが、Moore は渦輪の平均移動速度 $\ol{U}$ が以下の様になることを見出した。
$$
\begin{split}
\ol{U} = \ff{\G}{4\pi R}\left[ \log\ff{16R}{a+b}-\ff{1}{4} \right]
\end{split} \qquad(26)
$$
Moore [1985] は、圧縮性流体中の均一な渦輪について議論し、マッハ数の最低次数にて速度がこのようになることを示している。ただし、無限遠での音速を $c_{\infty}$ として、$\DL{M=\ff{\G}{2\pi ac_{\infty}} }$ である。
$$
\begin{split}
U = \ff{\G}{4\pi R}\left[ \log\ff{8R}{a}-\ff{1}{4}-\ff{5M^2}{12} \right]
\end{split} \qquad(27)
$$
薄いコア渦輪の速度に与えるスワールの効果に対する物理学的な説明は、曲がった渦糸の張力という概念により与えられる。渦糸が曲がると、曲率の中心側の流線が密になって圧力が低下し、その反対側では圧力が上昇する。この法線方向 $\B{n}$ の圧力差は、渦糸に沿って張力 $\B{T}$ が作用するのと等価で、線素 $\diff s$ に対しては内向きの力 $\DL{T_0\,\diff s\,\ff{\B{n}}{\rho} }$ を生む($\rho$ は曲率半径)。線素が周囲の流体に対して速度 $\B{U}$ で移動しており、その循環が $\G$ であると仮定すると、単位接線ベクトル $\B{s}$ に沿って Kutta 揚力 $\G \B{s}\times \B{U}\,\diff s$ が作用する。コアが中空ないしは停滞している場合、慣性力と仮想質量効果のオーダーが小さいため、これらの力が主導的なオーダーとしてバランスする。つまり、以下の釣り合い式を得る。($\B{b}=\B{s}\times \B{n}$)
$$
\left\{
\begin{split}
&\, \ff{T_0}{R}\B{n}+\G \B{s}\times \B{U} = \B{0} \EE
&\, \B{U} = \ff{T_0}{\G R} \B{b}
\end{split} \qquad(28)
\right.
$$
上式を Hick の結果と比較すると、停滞したリングの速度は次のようになる。
$$
\begin{split}
T_0 = \ff{\G^2}{4\pi} \left( \log \ff{8R}{a} -\ff{1}{2} \right)
\end{split} \qquad(29)
$$
この結果は、適合漸近展開を用いてコア表面の圧力を計算することでも確認できる(Moore and Saffman
[1972])。
ここで、渦糸が空でも停滞してもおらず、回転速度 $v_{\q}(r)$ を持っていると仮定する。この場合、渦糸内(filament = 薄いコア?)の圧力は遠心力によって減少し、これは追加の吸引力または張力と同等となる。なお、コア内では $\DL{ \ff{\del p}{\del r} = -\ff{v_{\q}^2 (r)}{r} }$ の関係にある。
$$
\begin{split}
-2\pi \int_0^a r\Big( p-p(a) \Big)\diff r = \pi \int_0^a r\, v_{\q}^2\, \diff r = \ff{1}{2}\pi a^2 \ol{v_{\q}^2}
\end{split} \qquad(30)
$$
コア内に軸方向の流れ $w_0(r)$ があれば、これは圧縮ないしは負の張力と等価で、運動量流束 $\DL{ 2\pi \int_0^a r\,w_0^2\, \diff r = \pi a^2\, \ol{w_0^2} }$ の形で表される。したがって、内部構造は効果は(28)の張力 $T_0$ を
$$
\begin{split}
T_0+\ff{1}{2}\pi a^2 \Big( \ol{v_{\q}^2}-2\ol{w_0^2} \Big)
\end{split} \qquad(31)
$$
で置き換えることに対応し、これが(20)のスワール・内部構造の項を与える。
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