最も単純な渦斑は,無限領域の流体中にある半径 $R$ の円形渦(ランキン渦)である。この流れに対するシュワルツ関数 $G,F$ と渦斑外部の表式はこのようになる。
$$
\left\{
\begin{split}
&\, G = \ff{1}{2}\ff{R^2}{z} \EE
&\, F = 0 \EE
&\, u-iv = -\ff{i\om R^2}{2z}
\end{split} \qquad(1)
\right.
$$
Kirchhoff(Lamb[1932 §159]参照)は、この解が長短半径 $a,b$ を持つ楕円が一定の角速度、
$$
\begin{split}
\Omega = \om \ff{ab}{(a+b)^2}
\end{split} \qquad(2)
$$
で剛体回転する解に一般化できることを示している。
この結果を導く方法は多数あるが,ここでは未知量を「単位円 $|\zeta|=1$ の外部から楕円の外部への正則写像」として扱う Jimenez–Schwarz 関数による方法を用いる。まず、写像はこのように与えられて、
$$
\left\{
\begin{split}
&\, z = \A(t)\zeta+\ff{\beta(t)}{\zeta} \EE
&\, \zeta =\ff{z+\sqrt{z^2-4\A\beta} }{2\A}
\end{split} \qquad(3)
\right.
$$
今、$\zeta=1$ が長軸端に写るように設定しても一般性を失うことないので、このとき、
$$
\left\{
\begin{split}
&\, \A+\beta = ae^{i\q} \EE
&\, \A-\beta = be^{i\q} \EE
&\, \A = \ff{1}{2}(a+b)e^{i\q} \EE
&\, \beta = \ff{1}{2}(a-b)e^{i\q}
\end{split} \qquad(4)
\right.
$$
となる。なお、$\q$ は $x$ 軸と長軸との成す角であるとする。さらに、$A$ を楕円の面積として $\A\overline{\A}-\beta\overline{\beta} = ab = \DL{\ff{A}{\pi} }$ となることに注意。渦運動の方程式から $\om$ と $A$ の両方とも一定であることを要請している。楕円上では $\zeta \overline{\zeta} = 1$ となることを利用し、(3) に代入すると以下が成り立つ。
$$
\begin{split}
\overline{z} = \ff{\overline{\A}}{\zeta}+\overline{\beta} \zeta = \ff{\overline{\beta}}{\A}z+\ff{ab}{\A\zeta}
\end{split} \qquad(5)
$$
$\DL{ \ff{1}{\zeta} }$ は楕円の外部で正則であるゆえに、§2の記法で、
$$
\begin{split}
G(z) = \ff{ab}{\A \zeta}
\end{split} \qquad(6)
$$
とできて、そのため境界および外部で誘起される速度場はこのように記述できる。
$$
\begin{split}
u-iv = -\ff{i\om ab}{2\A \zeta}
\end{split} \qquad(7)
$$
楕円 $Z(s,t)$ のパラメーター表示は (3)により与えられる。このとき、$\zeta = e^{is}\,\,(0\leq s \leq 2\pi)$ であるので、このようになる。
$$
\left\{
\begin{split}
&\, \ff{\del Z}{\del t} = \dot{\A} \zeta+\ff{\dot{\beta}}{\zeta} \EE
&\, \ff{\del Z}{\del s} = i\A\zeta-\ff{i\beta}{\zeta}
\end{split} \qquad(8)
\right.
$$
境界条件は $(2.6)$ で与えたように、
$$
\begin{split}
\dot{\A} \zeta+\ff{\dot{\beta}}{\zeta}-\ff{i\om ab}{2\overline{\A}}\zeta \parallel i\A\zeta-\ff{i\beta}{\zeta}
\end{split} \qquad(9)
$$
ここから次が従って、
$$
\begin{split}
\ff{ \dot{\A}-\ff{i\om ab}{2\overline{\A}} }{\dot{\beta}} = \ff{i\A}{-i\beta}
\end{split} \qquad(10)
$$
これにより、
$$
\begin{split}
\ff{\dot{\A}}{\A}-\ff{i\om ab}{2\A\overline{\A}} = -\ff{\dot{\beta}}{\beta}
\end{split} \qquad(11)
$$
と言える。
この方程式(面積保存則と組み合わせることで)は、唯一の解を持つと言え、(2) が確かめられる。
$$
\left\{
\begin{split}
&\, \dot{a} = 0 \EE
&\, \dot{b} = 0 \EE
&\, \dot{\q} = \ff{\om ab}{4\A \overline{\A}} = \Omega
\end{split} \qquad(12)
\right.
$$
$\DL{ \ff{a}{b}\to 1 }$ の極限において、回転楕円は円形渦斑の微小な摂動 $r = a+\eps\cos 2(\q-\Omega_2 t)$ のように振舞う。これは、Kelvin [1880] と Lamb [1932 §158] が示した $\Omega_2 = \om/4$ と合致している(§4参照のこと)。これは(2)式の $a→b$ の極限と一致し、この極限では、流体粒子は角速度 $\om/2=2\Omega$ で回転することになるが、境界面の運動は渦斑内の流体に対しては逆行する。
Batchelor [1967 §7.3] が指摘したように、極限 $b→0, \om→\infty, 2\Omega b→\kappa$ は、長さ $2a$、強度 $\kappa\sqrt{ 1-x^2/a^2 } $ の渦層が角速度 $\kappa/a$ で定常回転する状態と見なせる。なお、両端の強度はゼロのため、巻き上がりを開始させる力の不均衡は無い。この例は、非定常な渦層が必ずしも巻き上がる必要がないことを示している。Moore と Saffman [1971] は、キルヒホッフ解を一様ひずみ場における渦斑に一般化しており、
$$
\left\{
\begin{split}
&\, U_E = -\eps y \EE
&\, V_E = -\eps x \EE
&\, U_E+iV_E = i\eps \overline{z}
\end{split} \qquad(13)
\right.
$$
このとき (9) はこのように置き換えられ、
$$
\begin{split}
\dot{\A} \zeta+\ff{\dot{\beta}}{\zeta}-\ff{i\om ab}{2\overline{\A}}\zeta+i\eps \left( \ff{\overline{\A}}{\zeta}+\overline{\beta}\zeta \right) \parallel i\A\zeta-\ff{i\beta}{\zeta}
\end{split} \qquad(14)
$$
以下が言える。
$$
\begin{split}
a\dot{a}-b\dot{b} = -\eps(a^2+b^2)\sin 2\q
\end{split} \qquad(15)
$$
$$
\begin{split}
\dot{\q} = \ff{\om ab}{(a+b)^2}-\eps \ff{a^2+b^2}{a^2-b^2}\cos2\q
\end{split} \qquad(16)
$$
定常解は $\q=0$ のときに存在し、その場合、主軸は主ひずみ速度の方向と $\DL{ \ff{1}{4}\pi }$ の角度をなす。つまり、これを満たす。
$$
\begin{split}
\ff{\eps}{\om} = \ff{ab(a-b)}{(a+b)(a^2+b^2)}
\end{split} \qquad(17)
$$
この関係式の興味深い点は、右辺が $a/b (\leq 1)$ の関数としてゼロから始まり、$a/b=(a/b)_c=2.9$ のときに約 $0.15$ の最大値まで上昇し、その後ゼロまで減少することである。したがって、均一な外部ひずみ場において、ひずみが大きすぎる場合、または渦度が小さすぎる場合、定常楕円渦斑は存在できないと言える。ひずみがそれほど大きくない場合は、2つの解が存在し、1つは比較的円形で、もう1つは比較的直線的となる。
MooreとSaffman [1971]は楕円曲線座標系における表現を用い、解析の対象を定常状態と 2 次元微小擾乱に対するその安定性に限定した。一定一様ひずみ場における楕円渦斑に対する発展方程式 (15) および (16) を与える非定常流れへの拡張は、Kida [1981a]によって与えられた。(Neu [1984]、Jimenez [1988]も参照)。なお、$\eps$ は定数である必要はなく、任意の時間関数とすることができることに注意されたい。初期ひずみが、ある $a/b$ に対して (17) 式を満たさない場合、渦は伸長主軸に沿って細長い楕円形に引き出される。この解は、(13)式を次のように置き換えることで、主ひずみ速度の方向の変化を含むように一般化することもできる。
$$
\begin{split}
U_E+iV_E = -i\eps \overline{z}+\gamma\overline{z}
\end{split} \qquad(18)
$$
なお、$\gamma$ は実数であり、任意時間についての関数である可能性もある。これは、前述の通りであり、以下が言える。
$$
\begin{split}
a\dot{a}-b\dot{b} = -\eps(a^2+b^2)\sin 2\q+\gamma(a^2+b^2)\cos2\q
\end{split} \qquad(19)
$$
$$
\begin{split}
\dot{\q} = \ff{\om ab}{(a+b)^2}-\eps \ff{a^2+b^2}{a^2-b^2}\cos2\q-\gamma \ff{a^2+b^2}{a^2-b^2}\sin2\q
\end{split} \qquad(20)
$$
なお、面積 $\pi ab = A = const.$ は保存されるので、これらの方程式により、楕円の軸比と方位を記述できる。
(18)の右辺に $i\Omega_0 z$ の項を加えると、無限遠における固体回転 $\Omega_0$ が含まれることになる。$\gamma = 0, \eps=-\Omega_0=-\kappa/2$ をとると、渦斑の単純せん断 $u=\kappa y$ に相当する。平衡配置と
一般的な 2 次元擾乱に対する安定性は、Moore と Saffman [1971] により計算されている($4参照)。
単純せん断面内の渦斑の非定常運動を記述する(19)と(20)の修正は、Kidaによって与えられており、それらは直接求めることもできるし、角速度 $\Omega_0$ で回転する軸に移動して $\om$ を $\om-2\Omega$ に変えてから(19)と(20)を使うことで求めることもできる。
式(19)と(20)は、渦斑によって誘起される外部速度に関する式(7)と共に、渦斑の相互作用を研究する楕円渦近似の基礎となる。式(7)を用いて、他の渦斑によって生成される外部速度場を展開し、必要に応じて、渦斑を中心とするテイラー級数として結像させる。
この線形項は(18)の形をとり、式(19)と(20)のひずみ速度が決定できる。これらの式は、楕円の軸比と向きの変化を記述することになる。渦斑中心の対流は、3.2節で述べた Betz の結果によって与えられ、それによれば、中心の速度は渦斑を通過する外部速度の平均となる。この結果は、複素速度のテイラー展開における定数項と二次項からも導かれる。すなわち、
$$
\begin{split}
\ff{\diff W}{\diff z} = \left( \ff{\diff W}{\diff z} \right)_0+z\left( \ff{\diff^2 W}{\diff z^2} \right)_0+\ff{1}{2}z^2\left( \ff{\diff^3 W}{\diff z^3} \right)_0
\end{split} \qquad(21)
$$
とできる。なお、$W$ は他の渦斑が誘起する複素ポテンシャルであり、添え字 $0$ は、注目している渦斑の中心における展開であることを示している。上式はさらに、
$$
\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}(X-iY) = \left( \ff{\diff W}{\diff z} \right)_0+\ff{1}{8}(a^2-b^2)e^{2i\q}\left( \ff{\diff^3 W}{\diff z^3} \right)_0
\end{split} \qquad(22)
$$
とできる。
MooreとSaffman [1975a] はこの考え方を用いて乱流混合層のモデルを構築した。このモデルでは渦は、巻き込みによって大きくなりすぎて、層内の他の渦(コヒーレント構造)によって誘起される歪み場内に存在できなくなると、「分裂」によって破壊される。これらの方程式の簡略化された準定常版(式(19)と(20)の左辺と式(22)の高次項を無視)は、平面界面に接近する渦対の研究においてSaffman [1979]によって用いられ、実験的に報告されていた反発現象(HarveyとPerry [1971])を研究し、この現象が渦の有限サイズによるものではないことを実証している。
Melander, Zabusky, Styczek [1986]は、(19),(20),(22)の系と、渦斑からの $W$ への寄与を計算するために(7)を用いると、ハミルトン形式の方程式の集合になることを示した。
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