渦斑の進化は Euler 方程式に支配される。このことは、斑内部の渦度および斑の面積が一定であること、そして渦跳躍が物質面であることを含意する。したがって、渦斑の運動を決定するには、境界上における渦斑自身の誘起速度場(および外部の渦や鏡像が生む外部速度場)を知れば十分である。
この考えは Deem と Zabusky [1978] により活用され、プラズマ物理の waterbag モデルに類似した手法に従って、境界のための積分微分方程式を書き下し、 Birkhoff–Rott 方程式と同様に“行進”型問題へ還元した。
さて、複素座標 $z=x+iy$ を用いて解析を進めるとしよう。今、渦班が面積 $A$ を占めるとして、点 $P$ における複素速度場 $u-iv$ は以下のように表せる。
$$
\begin{split}
u-iv = -\ff{i\om}{2\pi}\iint_A \ff{\diff x’\diff y’}{z-z’}
\end{split} \qquad(1)
$$
$z$ が渦班の外側にあると仮定すると、グリーンの定理から以下が言えて、
$$
\begin{split}
\iint_A \ff{\diff x’\diff y’}{z-z’} = \oint_{\del A} \log(z-z’)\diff y’
\end{split} \qquad(2)
$$
さらに、コーシーの定理から、このことが言える。
$$
\begin{split}
\oint_{\del A} \log(z-z’)(\diff x’+i\diff y’) = 0
\end{split} \qquad(3)
$$
そして、(2) と (3) を実部と虚部に分けると、
$$
\begin{split}
\iint_A \ff{\diff x’\diff y’}{z-z’} = i\oint_{\del A} \log|z-z’|\,(\diff x’-i\diff y’)
\end{split}
$$
それゆえ、
$$
\begin{split}
u+iv = \ff{\om}{2\pi} \oint_{\del A} \log|z-z’|\diff z’
\end{split} \qquad(4)
$$
を得る。この式のより詳細な変形は、Pulling [1981]によって示され、
$$
\begin{split}
\log|z-z’| = \ff{1}{2}\log|z-z’|+\ff{1}{2}\log| \overline{z}-\overline{z’} |
\end{split}
$$
さらにコーシーの定理を用いて部分積分を実行すると、これを得る。
$$
\begin{split}
u+iv = -\ff{\om}{4\pi} \oint_{\del A} \ff{z-z’}{\overline{z}-\overline{z’}} \diff \overline{z’}
\end{split} \qquad(5)
$$
この形は数値計算に有利であり、$z \to z’$ と同一輪郭上で極限を取ると、被積分関数が有限の値、$\DL{ \ff{\diff z’}{\diff \overline{z’}} = e^{2i\q} }$ をとる。なお、$\theta$ は点 $z$ における接線と $x$ 軸のなす角とする。
ここに、境界のパラメーター表示を $Z(s,t)$ として、境界が物質面である条件は、$\DL{ \ff{\del Z}{\del t} }$ と誘起速度との差が境界に平行であること、すなわち、
$$
\begin{split}
\Im \left[ \left\{ \ff{\del Z}{\del t}-(U+iV)-(U_E+iV_E) \right\} \ff{\del \overline{Z}}{\del s} \right] = 0
\end{split}
$$
あるいは、
$$
\begin{split}
\ff{\del Z}{\del s} \parallel \ff{\del Z}{\del t}-(U+iV)-(U_E+iV_E)
\end{split} \qquad(6)
$$
ここに、以下の関係が成立する。
$$
\begin{split}
U+iV = \ff{\om}{2\pi} \oint_{\del A} \ff{Z-Z’}{\overline{Z}-\overline{Z’}} \ff{\del \overline{Z’}}{\del s’} \diff s’
\end{split} \qquad(7)
$$
そして($U_E, U_E$)は外部生成された速度場の成分を表すとする。
今、(7) の積分は特異であるが、その特異性は十分弱いため、積分は不定リーマン積分として計算できる。ここで $s$ をラグランジアン変数として選び、($U+U_E, V+V_E$) の接線成分を持つ境界に平行に移動する点に対しては $s$ が定数であるとすると、(6) は次の単純な形をとる。
$$
\begin{split}
\ff{\del Z}{\del t} = (U+U_E)+i(V+V_E)
\end{split} \qquad(8)
$$
(6)と(7)、あるいは(7)と(8)を解くことによって渦班の進化を導くアプローチは、等高線力学(輪郭動力学法)と呼ばれる。
別の定式化ではシュワルツ関数の概念を用いる。単純閉曲線 $C$ 上で $\Phi(z)=\overline{z}$ を満たす解析関数を構成する。$z=A(\zeta)$ を $C$ の外部から単位円 $|\zeta|=1$ 外部への等角写像とすると、一般には $\Phi(z)$ は $C$ の内外に特異点を持つが、我々はこのように書くことができる。
$$
\begin{split}
\Phi(z) = F(z)+G(z)
\end{split}
$$
ただし、$F(z)$ は$C$ 内の解析関数、$G(z)$ は $C$ の外側の解析関数とする。もし、$\Phi(z)$ が$C$ 上にてローラン展開できるのであれば、このようになるはずであり、
$$
\begin{split}
\Phi(z) = \sum_{0}^{\infty} f_n z^n+\sum_{1}^{\infty} g_n z^{-n}
\end{split} \qquad(9)
$$
そして、$F$ と $G$ は、この級数の解析接続となることが言える。なお、以下のことに注意せよ。
$$
\begin{split}
\Phi(z) = \overline{z} \quad (\RM{on}\,\, C)
\end{split} \qquad(10)
$$
ここで、$(u,v)$ を渦班によって誘起される速度成分としよう。すると、$u-iv$ は $C$ の外側では解析的であり、$u-iv+\DL{ \ff{1}{2}i\om \overline{z} }$ は $C$ の内側では解析的となるため、$C$ の内側では $\DL{ \ff{\del v}{\del x}-\ff{\del u}{\del y} }=\om$ が成立する。さらに、今、次の速度場を考えよう。
$$
\left\{
\begin{split}
&\, u-iv = -\ff{1}{2}i\om G \quad (\RM{outside}\,\, C) \EE
&\, u-iv = \ff{1}{2}i\om F-\ff{1}{2}i\om \overline{z} \quad (\RM{intside}\,\, C)
\end{split} \qquad(11)
\right.
$$
速度は $C$ 上で連続であり、$C$ の内側では一定の渦度を与える。そして、その外側では解析的であるため、渦班によって誘起される速度と解釈できる。その時間発展は (6) または (8) で与えられ、等角写像 $A(ζ)$ の式が得られる。円形からあまり変形していない渦斑の場合、ローラン展開が存在すると予想され、もし以下のように出来るなら、
$$
\begin{split}
A(\zeta) = \zeta \left(a_0+\ff{a_1}{\zeta}+\ff{a_2}{\zeta^2}+\cdots \right)
\end{split} \qquad(12)
$$
とできて、今、$C$ 上で、$\DL{ \overline{\zeta}=\ff{1}{\zeta} }$ ゆえ以下が言える。
$$
\begin{split}
\overline{z} = \ff{1}{\zeta} \big(\overline{a_0}+\overline{a_1}\zeta+\overline{a_2}\zeta^2+\cdots \big)
\end{split} \qquad(13)
$$
さらに、$C$ 上にて、次のことも導ける。
$$
\begin{split}
g_n = \ff{1}{2i\pi} \oint \overline{z}\, z^{n-1}\,\diff z = \text{積}\,\overline{z}A^{n-1}\ff{\diff A}{\diff \zeta} \,\text{における}\zeta^{-1}\text{の係数}
\end{split} \qquad(14)
$$
発展方程式は、係数 $a_n(t)$ に対する非線形常微分方程式の無限集合となる。与えられた滑らかな初期条件に対して、滑らかな解が常に存在することは、Chemin [1991] によって実証されている。したがって、滑らかな初期データから有限時間内にコーナーやカスプが形成されることはない。しかしながら、フィラメンテーションと呼ばれる過程によって、多くの高曲率点を持つ高度に複雑な曲面が形成されるという数値的証拠がある(§5を参照せよ)。初期の境界が特異な場合、解が滑らかになることができないというのは、オイラー方程式の可逆性からの帰結である。
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